アニメ
11thシングル「アイオライト」をリリースした水瀬いのりが、本誌5月10日発売号に登場。掲載しきれなかったインタビューをお届けします。
――シングル「アイオライト」は、水瀬さんがヒロイン役を務めているTVアニメ「デッドマウント・デスプレイ」のエンディングテーマですが、初めて曲を聴かれた時の印象を教えてください。
初めて聴いた時は妖しさ、不穏な感じ、そして怖いもの見たさのような好奇心を刺激される楽曲だと感じました。アニメ同様、この先どうなるんだろうと続きが知りたくなるような。自分の中の閉ざされた一面が刺激される楽曲でもあります。
――閉ざされた面というのは?
ジャケット写真のように、ちょっとクールな一面ですかね。今までは、寄り添うような温かい楽曲を歌わせていただくことが多かったんです。でも、自分の本質はどちらかというとネガティブ寄りで、頑張ることがあまり得意ではないので、そういう自分を肯定してくれる楽曲だと思いました。
――タイトルの“アイオライト”は、すみれ色のパワーストーンのことでしょうか?
そうなんです。タイトルは、作詞・作曲してくださった志村真白さんが発案してくださったんですが、「デッドマウント・デスプレイ」の世界観にとてもシンクロしていて……。タイアップに相応しく、私らしさもある楽曲になりました。「自分らしくいていいよ」という気持ちにさせてくれる歌詞には励まされたし、共鳴もしました。「分かる、分かる」という気持ちになったんです。「アイオライト」には“アイを謳え”という歌詞が出てくるのですが、“アイ”は“I”かもしれないし、“愛”かもしれないし、“哀”かもしれない。“多色に煌めいた”というフレーズも出てくるのですが、自分の感性のままに聴いてほしいですね。聴かれた方が答えを出すのではなく、進む方角を示してくれるような曲であり、アニメで(主人公の)ポルカくんが見ている世界ともリンクしている内容だと思います。
――ポルカくんが生きることにもがいている心情が表現されている?
そうですね。“今は答えも解らなくたって構わないさ”というフレーズも答えを決めることに正義があるわけではなく、そこに向かうまでの道のりも自分の大切な光。前回のアルバム『glow』の時にも感じていたことだったので、狙ってはいないのですが、すごく繋がったなと思っています。
――水瀬さんが声を担当しているミサキさんは、メガネをかけた殺人鬼です。
“殺し屋殺し”という異名を持った少女で、ぶっとんだヒロインです。天真爛漫で好奇心旺盛な中にある狂気がキーになっているので、そのあたりを表現できるよう心掛けて演じています。
――ダンサーたちが登場する「アイオライト」のミュージックビデオも新境地です。マニッシュでクールな水瀬さんが新鮮ですが、返ってきた反応は?
パントマイムっぽい動きや、リズムに合わせて踊るだけではないパフォーマンスに挑戦しました。ビジュアルに関しては、ジャケ写が解禁になった時は「次は、こんな感じで来るんだ」って皆さんビックリされている印象でしたね。スーツ姿の衝撃もありつつ、「カッコいい」「新しい水瀬いのりが見られてうれしい」という声が多かったです。楽曲の力もあいまって、表現できたダーク感だと思っています。
――C/W「クータスタ」は藤永龍太郎(Elements Garden)さんの書かれた曲ですね。
今までいろいろな曲を書いてもらっている藤永さんなので、私の素の部分だったり、アーティストや声優として活動していく中での葛藤も混ぜた歌を作っていただきたいなと。走り続けていくのも大切ですが、個人的には長く活動を続けていく上で休憩することや自分のペースを保つのは、大切なことだなって。ライブで自分の気持ちを、皆さんに伝えられたらいいなという気持ちで書いていただいた曲です。
――“わたしがわたしだと歌を歌うのは きっとあなたに聞いてほしいから”という歌詞が出てきますが、水瀬さんがツアーを通して感じたことを反映して藤永さんが書いていらっしゃるのかなと?
そうですね。これまで歌を歌わせていただいてきて、会場の大きさや聴いてくれる方たちの人数に左右されたくないので、例え聴いてくれるのが1人だけでも私はあなたのために歌うっていう。もともと両親にそんな気持ちで歌を聴いてもらっていたので、ホントに応援してくださる方たちに届けば、それが私の歌だと思っています。
――「運命の赤い糸」はいちばん穏やかなミドルバラードですね。
心の中のザワザワした部分を表現したような蠢く感じの曲が続いて、3曲目の「運命の赤い糸」ではそういう感情をスーッと吸い取ってくれる。アルバム『glow』のリードトラック「glow」を書いてくださった椿山日南子さんにお願いした曲で、誰かを思う気持ちを歌ったとても優しいラブソングになりました。
――水瀬さん的に今回のシングルを総括すると?
10枚目のシングルを経ての11枚目で、この先に続く一歩目です。新旧織り混ぜた内容で、今まで培ってきた自分の音楽性も失わずに入れることができているので新しいことに全力で振り切ったというより、新たな挑戦に引っ張ってもらいつつ、今まで吸収したものも反映されています。今までは“光”寄りの曲でしたが、個人的には今作をリリースしたことで、よりダークな方面も拡張できたと思っています。「アイオライト」は曲調的には新しいですけど、歌詞、メッセージはすごく素に近い。自分でも不思議に感じています。
――9月17日(日)の兵庫公演から始まるツアー(宮城、愛知、福岡、ファイナルの神奈川・ぴあアリーナMM 2DAYSまで全国5都市6公演)についてイメージしていることは?
前回のツアーで衣装やシャボン玉を出す演出など、自分の中に湧き上がったアイデアを実現させて、少しずつ見たい景色や音楽が発信できるようになってきているので、今年のツアーは開催前のミーティングから自分のイメージやアイデアを積極的に提案したいと思います。新しいライブにしたいので、これまでとは違う構成だったり、演出で「こんなライブ初めてだな」と思っていただけるものを、しっかり形にできることがまずは理想です。「アイオライト」というシングルがくれた新しさを、しっかり形にしたいですね。
NOW ON SALE
「アイオライト」
1430円(税込)
キングレコード
撮影/吉岡希鼓斗 取材・文/山本弘子