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NEWS 2020.05.29
©テレビ朝日・テレコムスタッフ

6/2放送(ドイツ) ©テレビ朝日・テレコムスタッフ

 1987年6月に放送開始以来、長く愛されている紀行番組「世界の車窓から」(テレ朝系)。世界中の鉄道や列車の行程とともに、各国の文化と歴史をさかのぼります。6月は、これまで放送したものから、えりすぐりの回を再編集した特別編を放送。異国情緒や旅情感、そしてドラマチックな偶然の出合いが待っています。

 発売中のTVstation12号では、その制作裏話をご紹介。誌面未掲載の写真とともに、番組を制作する水谷久美プロデューサーのインタビューをたっぷりお伝えします。

 

――番組は、どのような流れで制作しているのでしょうか?

 ロケの準備は3、4ヵ月前から始めます。まず時刻表を手に入れて、旅のルートを組み立て、鉄道や取材先の撮影許可を取って準備をします。取材期間は国にもよりますが、だいたい3週間から1ヵ月くらい。日本に戻ってから編集して2、3カ月分の番組となります。

 撮影スタッフは、ディレクター、カメラマン、ビデオエンジニアの3名。そこに、現地のコーディネーターとドライバーが加わり、5名体制で取材を行なっています。

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チューリップ畑を走る列車を撮影するスタッフ ©テレコムスタッフ

――ロケーション選びのポイントを教えてください。

 その国の風景が一番良い季節に合わせて取材をするようにしています。

例えば、花咲く春のオランダ、真夏のイタリア、白夜の北欧、紅葉のカナダなど。一年でその瞬間だけ見られる風景というのは、時期を合わせるのが結構大変なのです。昨年春のオランダ取材では、ロケ直前になって「チューリップの開花が予想より1週間早まりそう」というニュースが飛びこんできました。この時は、全体の日程は変えずに、乗車する路線の順序を入れ替えて、無事に満開のチューリップを撮影することができました。多少ずれても大丈夫なように、いろんなパターンに対応できるロケスケジュールを組んでおくのがコツです。

 車窓選びで重視していることは、やはり景色の良い所です。地図や本、旅人の情報や鉄道会社に教えてもらうなどして調べます。ほかには、その国らしい気候風土、街並み、歴史が見られるルートも選ぶようにしています。素晴らしい車窓風景に出合うためには、列車に乗る時間帯も重要です。早朝や夕方はドラマチックな景色が見られるので、夜行列車を組み込むこともあります。春に放送した「チュニジア編」では、三日月の日に合わせて夕方の列車に乗り、空に浮かぶ月が狙いどおりにうまく撮影できました!

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チューリップ畑を走る列車(オランダ) ©テレコムスタッフ

 

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ビーチ沿いを走る列車(真夏の南イタリア) ©テレコムスタッフ

 

――撮影中のハプニングや、国外ロケならではの大変さ、楽しさなどを教えてください。

 撮影するはずの列車が、当日になって運行休止! ……これは、現場はかなり慌てます。「チュニジア編」でも、乗るはずの朝の列車がなくなり、仕方なく午後の列車に乗ったら、今度は途中の駅で機関車が故障してしまうというハプニングがありました。救援が来て、なんとか無事に目的地には着いたのですが、すっかり日が暮れてしまいました。

 本来なら、お昼には着いて、街の撮影もするはずだったのです。でも遅れたおかげで、思いがけず美しい夕暮れが撮影できました。決めたスケジュール通りに進まない時は、流れに任せるしかありません。そうすると、予想もしない良い映像が撮れたり、不思議とうまく行くことが多いようです。

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年季の入ったディーゼル列車(チュニジア) ©テレコムスタッフ

 海外ロケならではの大変さは、言葉の問題や、文化や風習の違い、食事に時間がかかるなど、いろいろあります。ロケ中は朝から晩まで撮影が続き、移動も多いので、荷造りが毎日あって大変ですが、この番組のロケは、なんといっても“旅する楽しさ”があります!

 事前のロケハンは行わないので、すべてが出たとこ勝負。行き当たりばったり旅です。初めて出合うものばかりなので、良いものを一瞬たりとも見逃すまい、とスタッフはみんな集中力がすごいです。その場で偶然出合ったものや、旅の臨場感を伝えられるように、丁寧に向き合っています。撮影隊が旅を楽しむほど、より良い番組ができると思うので、みんなには「とにかく旅を楽しんで!」と言って送り出しています。

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ローマ時代の水道橋の間を走る(チュニジア) ©テレコムスタッフ

 

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トスカーナ地方のローカル列車(イタリア) ©テレコムスタッフ

――時代とともに、撮影の仕方などで「変化したこと」はありますか?

 撮影機材の進化で、小型カメラを蒸気機関車の車輪近くに取り付けて撮影するなど、これまで見られなかった映像も追求しています。最近は、空撮にドローンを使うことも増えてきました。ただ、列車のスピードには、なかなか追いつけないのが難しいところです。ヘリコプターなら1時間くらい列車を追いかけて、いろんな飛び方で撮影できたのですが、ドローンが撮影できるのは1、2カット。この番組では、地元のオペレーターさんに依頼して撮影してもらっています。

 昨年のイタリアロケでは、映画の撮影をよく手掛けるチームにお世話になり、撮れた映像も素晴らしかったです。そのほか、撮影の仕方で変わったことと言えば、スマートフォンやタブレットの“地図アプリ”が使えるようになり、本当に便利になりました! 現在地もすぐ分かるので、列車の走りを撮影する時に重宝しています。

 逆に、変えずに大切にしている部分は、車窓からの風景を美しく撮ること。毎回ロケには、窓拭きセットを持っていき、自分たちで窓をキレイに拭いています。

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6/1放送(スイス) ©テレビ朝日・テレコムスタッフ

――1987年6月に放送スタートしてから、長寿番組として愛されてきた理由は、どんなところだと感じていますか? 

 「世界の車窓から」には、車窓から見える風景だけでなく、列車の旅を通して世界の国々の文化や歴史、人々の暮らしが見えてくる面白さがあると思います。異国情緒や旅情感、ドラマチックな偶然の出合いが、この番組の醍醐味。私たち制作スタッフも、「今日は何に出合えるだろう?」と、ワクワクしながら番組を作っています。放送スタートから、その部分はずっと変わりませんし、変わらない良さもあると思います。実は、同じことの繰り返しのようでいて、毎回違う。いつも新鮮な発見があって、飽きることがありません。

 

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6/1放送(スイス) ©テレビ朝日・テレコムスタッフ

世界の車窓から
テレ朝系 毎週(月・火)後11時10~11時15分
※地域により放送時間が異なります
https://www.tv-asahi.co.jp/train/

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