その他
みなさん、こんにちは。メンタルトレーニングコーチの大儀見浩介です。私の仕事は育成年代のスポーツ選手やアスリート、ビジネスパーソン、学校の先生や生徒、保護者の方々など、あらゆる人達の心理的競技能力向上のお手伝いをすることです。前回はメンタルトレーニングで重要な目標設定と「やる気」についての話をしました。
「3日坊主」という言葉がありますが、目標を立てた当初はやる気に満ちているのに、日にちが経つにつれてその決意もしぼんでいく…という経験はだれにでもあるのではないでしょうか。目標をたてたのに続かないのは、目標のたて方がうまく行っていないパターンが多いのです。前回、人間にとってもっともやる気が高まる「110%目標」について説明しましたが、『立てた目標に対してどう考えるか』というマインドセットも重要なのです。
それでは、目標に対してどう考えればいいのでしょうか? そのヒントになるのが『課題目標』と『自我目標』です。なにやらむずかしい言葉だな…と思ったあなた、ちょっとだけがまんしてください。
課題目標とは『何をするか』という「内容」を重視した目標のことです。一方の自我目標とは成績や数字、成果などの「結果」や評価を重視した目標のことです。目標をたてたのに長続きしない、やる気がでない…という人の多くは自我目標、つまり「結果」にばかり目がいってしまっている可能性があります。
自我目標志向の人は、仕事で思いどおりの成果が出なかった、あるいはテストの点数が悪かったといったときに、結果だけを見ていやになってしまうのです。また、ミス=いけないこと、低評価の情報、恥ずかしいこと、怒られる…と考えてしまいます。ちゃんと計画を立てて取り組んできたのに、結果が出なかったからといって、やる気を低下させてしまってはもったいないことです。
では、どうすればいいのでしょうか? 目標にチャレンジするときは、結果だけを意識するのではなく、「内容」(課題目標)に目を向けることが大切です。自分がどれだけ取り組んだか、何をどう考えて実行に移したかという「内容」「努力」を、自分自身で次のチャレンジにつなげること。それが「やる気の持続」につながっていくのです。
それでも結果がでなければ、「果たして、この内容で良かったのだろうか?」とチェックします。いわゆるPDCAサイクル(計画(Plan)/実行(Do)チェック(Check)/動き出す(Action))を回し、適正な努力ができていたかを検証すればいいわけです。だれでも、最初から目標通りにうまくいくはずがありません。逆に、最初からうまくいくのであれば、目標が低すぎると言えます。
トップアスリートの多くが「課題目標志向」です。私の妻・大儀見優季もワールドカップで優勝しても、オリンピックでメダルをとっても、結果には満足せず、内容に目を向けて日々、チャレンジを続けています。結果を考えて行動するのではなく、自分が成長するため、能力を伸ばすために「何をすべきか」を常に考えています。常にもっとうまくなれるんじゃないかと、貪欲に知識を吸収し、新たなトレーニングに励んでいます。たとえ失敗しても、「成功の過程」ととらえるので、モチベーションが低下することはありません。それどころか、「これをやってうまくいかなかったから、次はこうやってみよう」と、成長のヒントとして養分にしています。ミス=気付き、成長、発見、グレードアップととらえるのです。
目先の結果に一喜一憂するのではなく、目標に対してどうチャレンジしたか。その姿勢や過程、内容を工夫すること。それこそが目標に対してモチベーションを維持するために重要なことなのです。
次回はメンタルトレーニングの重要なスキルである、プラス思考とコミュニケーションについて、話をしたいと思います。
<プロフィール>
大儀見浩介(KOSUKE OOGIMI)
メンタルトレーニングコーチ。㈱メンタリスタ代表取締役。
サッカー選手として、東海大一中時代に全国優勝を経験。高校ではサッカー部主将として鈴木啓太(浦和レッズ/元日本代表)とプレーした。東海大学体育学部・高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育メンタルトレーニング、受験対策、ビジネスメンタルなど、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。テレビ・新聞・雑誌出演多数。著書に「C・ロナウドはなぜ5歩さがるのか~サッカー世界一わかりやすいメンタルトレーニング」「ヤングアスリートのための36のメンタルトレーニング」「心理戦術が日本サッカーを進化させる」がある。妻はなでしこジャパンの大儀見優季。http://www.mentalista.jp