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【ネタバレあり】Netflix映画『パレード』、藤井道人監督が語る劇場愛から「兄貴のような」あの人まで

映画 2024.03.20

 

Netflixで絶賛配信中の映画『パレード』。本誌(5号)では、配信開始に先立って行われた完成披露試写会での藤井道人監督のティーチインから映画のテーマや長澤まさみさんら主要キャスト、野田洋次郎さんの主題歌のお話などをご紹介しました。
実は、このティーチインでは、興味深いお話ではあるもののネタバレになるので配信前にはご紹介できないQ&Aもありました。今回は、配信開始3週間が経ったこのタイミングで、ネタバレ部分をレポートします(ティーチインの聞き手は本作オフィシャルライターのSYOさん。質問者はSYOさんと試写会ご参加の皆さんです)。

 

 

——『パレード』の撮影にはこの建物(渋谷の映画館「ユーロスペース」)も使われていますね。

藤井監督(以下同じ):僕が名もなき自主映画監督だったときに、毎日トークショー付きのレイトショーをやって、自分たちでチケットを売って、自主興行をやっていた場所がここです。この『パレード』という映画を、どうしても劇場で上映したいとネットフリックスさんにお願いして叶えていただいて。その場所が、自分がインディーズ時代にたくさんの仲間と切磋琢磨していたここだっていうのはすごく感慨深いですね。

 

 

——劇中には3つ、映画館が登場します。

ユーロスペースと「首里劇場」(沖縄県那覇市、2022年閉館)と「朝日座」(福島県南相馬市、1991年に映画館の営業は終了したが活用されている)。東北の街を舞台に撮らせてもらったときに、本当にたくさんの映画館が残っていて、そこにはたくさんの映写機があって、たくさんのフィルムが残っていて、そういう場所で自分は改めて歴史ある仕事を選ばせてもらっているんだなと感じました。映画館の館主さんたちがみんな、「ここにどういう映画監督が来て」という話をたくさんしてくださって、特に朝日座さんには大変お世話になって、本当にいい経験になりました。

 

 

——高校の授業のシーンで、先生が量子力学について説明していました。一般的には高校で教わらない内容だと思いますが、あれは“死後の世界”のようなものとの関連で?

まさにその通りです。あそこは先生が物理の授業の延長で、パラレルワールドだとか説明がつかないような世界もあるという、そう信じている人もいるんだよという話をしています。

この映画を作るに当たって、たくさんの人に取材をさせていただいて。(死者たちの世界について)物理的に説明される方もいれば、臨死体験のような話を収集して研究している方もいて、もう少しスピリチュアルな方向で語ってくださる方もいました。自分たちはこれをどういうふうに解釈しようかというときに、物理学の先生には何度も取材させていただきました。

 

 

——美奈子が亡くなっていることを観客が見てすぐ理解できるように表現するのは大変だったのではないですか?

めちゃくちゃ試行錯誤しました。CGだと、何百通りも考えました。手がすり抜けるのはどうだろうとか、“次元”が違うことを表現するにはどういう映像が適切かみたいなことでかなり悩みましたが、今回は極力、“ザッツCG”みたいなものに頼らないでやれないかなとCG部とも話して、あのような表現にしました。

 

 

——最後の夜のシーンは、主人公の美奈子(長澤まさみ)たちの顔、顔、顔が映る印象的なカメラワークでした。あれは例えば俳優さんたちの表情に打たれて、現場でそう決めたのでしょうか?

あそこはあのカット以外にも撮っていて、編集でああいう構成にしました。現場でお芝居を見ているときは、自分が受け取りたい感情だったり、悩みや余白がある表情だったりを、どうしても自分の目で見たくなるんですが、編集するときは、幽霊たちがサワサワささやいているような“具体のなさ”みたいなことって、どうやったら伝わるんだろうっていうので、もうちょっと引いたサイズにしようかとも思って。

でも、最終的にはあの選択をしましたね。顔だけでつないでいくっていうのも、こういう自由な作品でしか自分も挑戦できないと思ったので。元々はもっといっぱい(アザーカットが)あったんですよ。みんな「寒い」って言いながらも、「ラストシーンなんでお願いします」って言うと付き合ってくれて、結構撮っていましたね、あの日は。

 

 

——エンドロールに綾野剛さんのお名前がクレジットされていました。

剛さんは僕がダメになりそうになったときもずっと支えてくれる兄貴のような存在で。今回も脚本を書けたときに「読みたい」と言ってくれて、「僕も何かできることないか」「僕も出るよ」って言ってくれました。脚本を読んで「これ俺、アキラならできるよ」って言われて「おっと、それもう決まってるんですよね、事務所の後輩の方に。坂口くんがやるんです」って言って(笑)。

そんな会話もありましたけど、剛さんもそのとき別の作品に入っていて。ただ、最後のユーロスペースのシーンにさりげなく加わってくださいました。レイトショーが終わってから朝までの時間、ここをお借りして撮影しましたね。快くお貸しくださって。

SYOさん:僕も奥平大兼さんの隣にいるんですが、眠そうな顔をしてしまって申し訳なかったです……。あのとき、綾野さんも普通にそこにいらっしゃって溶け込んでおられたのでびっくりしました。僕らも知らなかったんですよ。あのシーンは藤井組のいろんな方が出演されているので、そこも楽しんでいただければと思います。

 

 

——エンドロールにはヤン・イクチュンさんのお名前もありました。「特別協力」ということですが?

生前、河村さん(本作を企画した河村光庸プロデューサー。2022年6月に死去)は韓国に親友がいる、それはヤン・イクチュンさんだと言っていました。『あゝ荒野』という作品だったり(菅田将暉とヤン・イクチュンのW主演映画で、配給は河村氏が代表を務めたスターサンズ)、彼のお別れ会にもメッセージを寄せておられたり。河村が大事にしていた友人の一人なので。

劇中でマイケルさん(リリー・フランキー)が言う「主演、監督、ヤン・イクチュンスタイル!」っていうのは、河村さんが言いそうな言葉ですね。今回、実はヤン・イクチュンさんにもオファーしたんですが、お忙しい部分がもちろんあって、でもすごく応援してくださっているというところで、「協力」というクレジットになっています。

 

取材・文/赤坂麻実

 

Netflix映画『パレード』Netflixにて独占配信中

 

 

 

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