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【インタビュー】原発事故描くドキュメンタリードラマ、ヘリ放水のパイロット演じた戸塚「到底行き着きようのない思いを体現できるのかという不安」

ドラマ 2026.03.11

3/13(金)放送のドキュメンタリードラマ「3.11~東日本大震災15年 福島第一原発事故 命の戦い~」でトリプル主演を務める白洲迅、戸塚純貴、三浦貴大。

独自取材をもとに実際の映像や肉声といったスクープ素材を交えたドラマとして注目を集めた「1995~地下鉄サリン事件30年 救命現場の声~」(25年フジ)の制作陣が手掛ける本作は、再び独自取材から“世界最悪レベルの原子力事故”と呼ばれる福島第一原発事故を描く。原発から20数キロ離れた病院で奮闘する医師・渋谷を白洲、原発を鎮めるためヘリコプターでの放水に挑んだ陸上自衛隊のパイロット・山岡を戸塚、地上から放水を目指す部隊の指揮をとった隊長・大倉を三浦が演じる。事故発生から15年、取材や撮影を通して真実に触れた3人が感じたこととは――。

 

――福島第一原発事故を描く作品に出演する心境は?

白洲 まず率直に、僕でいいのかなという大きな不安がありました。当時東京にいて人生で感じたことのない揺れは感じたものの、今作の舞台は福島。そんな自分が福島で起きたことを体現できるのか、と。ですが、僕が演じる渋谷も福島の人ではないのと、「これでいいのか」と苦悩し続ける姿に共感し、僕にも寄り添える部分があるんじゃないかと思いました。

三浦 現在進行形でみんなが考えていかなきゃいけないテーマですし、それを15年経った今、ドラマという形で届けることに意義があるはず。強い思いで現地に向かった方々がいたんだと改めて感じましたし、そんな方を演じさせていただくのは自分にとって良い経験になるだろうと。15年経って震災や原発について考え直す機会にもなると思いました。

戸塚 僕は岩手県の出身で、地震が起きた時も岩手にいたんです。役者の道に進んだきっかけの一つが震災で、15年という同じ時を歩んできたなか、役者として何か携われるものはないだろうかと考えていたので、とても感慨深かったです。真摯に向き合いながらも、できることを精一杯探しながら取り組みました。

 

――地震発生当日はどのように過ごしていましたか?

戸塚 自宅で寝ていて、地震の揺れで目が覚めたんです。なんなら「すぐ収まるだろう」と二度寝しようとして……。逃げようと思わなかったどころか、「起こさないでくれよ、寝かせてくれよ」と思っていました。だけど揺れが一向に収まらずどんどん強くなってきて、ラックが倒れてCDがバラバラにならないよう必死に押さえていたんです。外を見ると皆が逃げていて、ようやく一大事だと気付いて避難しました。もちろん学校で防災のことなど学んでいたはずなのに、危機感がなかったみたいで……。その後、岩手では停電が長く続き、復旧の目処が立たずテレビも電気もつかない、信号も機能しない。スーパーやコンビニの食料品が猛烈な勢いで買い占められる。暖を取るために車で過ごすようになると、ガソリンスタンドに大渋滞ができる。携帯もネットも繋がらない。先が見えず情報も入ってこない怖さを感じていましたし、何をしたらいいか分からず無になっていた記憶です。

白洲 戸塚くんのそのお話は、本当に衝撃でした。当時高校生だった僕は、みんなで体育館に集まっていて、女子の悲鳴など、断片的なことを鮮明に覚えています。自転車通学だったため普通に帰れて、携帯やネットが繋がりにくかったり、輪番停電が実施されていた程度で、当時の高校生としては「ちょっと不便だな」くらいの認識で。テレビで津波や原発が爆発する映像を見ても、深刻さを理解するまで頭が回っていませんでした。場合によっては東京まで放射線物質が飛んでくる可能性があったと、今作をきっかけに知って。呑気だったし、周りもそうだったなと思い返しています。

三浦 僕は新宿辺りに住んでいて、12階だったのですごく揺れて、「とんでもないことが起こっている」と感じて。大学時代の友人と住んでいたので心は保てたものの、どうしたらいいか分からない状況でした。だけど僕、大学時代にライフセービングをやっていたおかげで、避難用マップや公衆電話の場所を覚えていたんです。公衆電話で母や祖父母、兄に電話をして安否確認をし、当時富山にいた父に報告したのを覚えています。それと少し話がそれるんですけど、その後実家に帰ろうとなって。20km程を歩いて帰ろうとしたところ、友人が彼女の安否を確認したいからと言ってタクシーに乗ったんです。もちろん渋滞で全く進まず、でもメーターは上がり続ける状況のなか、運転手さんが「こんな時なんで」と言ってメーターを切ってくれて。すごくかっこよくて渋い運転手さんだったのに、タクシー会社とかを覚えていなくて、お礼を言えていないのが今でも気になってるんですよね。

 

――出演にあたって、モデルになった医師、自衛官にお話を聞いたとか。

白洲 実際にお会いしましたが、ものすごく壮絶なお話で。地震が発生してたくさんの患者さんが来て、命の取捨選択をしなきゃいけない局面や、淡々と向き合わなきゃいけない瞬間もあった、とおっしゃっていて。言葉で聞いても理解できないような、信じられない出来事ばかりでした。渋谷という役柄にも目の前の患者さんへの思いは間違いなく強くあるけど、自分が絶対に助けるんだという大きな決断をできた人ではないと思っています。絶対的なヒーローではなく、残るという決断をせざるを得なかった。そういう部分を大切に表現して演じるべきだと思いました。

三浦 普段は架空のキャラクターを演じることが多いですから、お会いして当時の気持ちを聞けるのは本当に稀なこと。より思いを大切にしなきゃいけないなと感じました。協力してくれた自衛官の方々にもお話を聞き、印象に残っているのが、3.11をきっかけに自衛官になった方が結構いらっしゃったこと。出来事自体の大きさを改めて感じましたし、大倉だけじゃなく、いろんな人たちの気持ちも背負って演じなきゃいけないなと改めて思いました。

戸塚 僕が演じたのはヘリで放水に挑んだパイロットです。実際のお話を伺うと、死を覚悟して事故現場に向かったんだそうです。山岡のモデルになった方にはご家族もいらっしゃいますし、皆さんそれぞれいろんな思いを背負いながら、責務を果たすために被災地に向かった。自衛官としての誇りを感じたと同時に、自分には到底行き着きようのない思いを体現できるのかという不安も生まれました。

 

――作中には辛い展開や、撮影も過酷な場面があったかと思います。

白洲 僕はあくまで役者として演じているに過ぎず、過酷な物語でも辛いとは口が裂けても言えません。ただ、その気持ちの一端に触れることができたのではと感じています。寝ずに患者さんに対応して、辛い選択もたくさんするけど、渋谷たち自身も被災者なんですよね。その辛さに触れて、温度感を持って感じることができたのかなと思います。

三浦 地上から放水した部隊は、20kgくらいの装備で放水に向かったそうです。撮影でも実際に着けましたがとても重くて、立っているだけでも大変なくらい。身体的辛さも背負いながら、自分がどうなるかも分からない場所に向かう人たちの気持ちは想像を超えてしまって、ある意味で普段の芝居では生まれない気持ちになりました。ただ辛いともまた違う、言葉で表現できないような気持ちだったのを覚えています。

戸塚 僕が着用した装備は、放射能を遮断させるタングステンと鉛でできたベストでした。着けてるだけで苦しいんですよ。もちろんマスクを着けているので呼吸しづらいですし、視界も狭い。そんな状態でヘリコプターを操縦して目的のために向かうのは、訓練した方でも簡単なことではないとおっしゃっていました。それを身に染みながら撮影に臨んだことで、作品につながっていけたらいいなと思いました。そして、実際の場所を提供していただいた自衛官の方々に感謝を伝えたいです。‎

 

――最後に、視聴者に見てほしいポイントを教えてください。

戸塚 放水の映像だったり、被災地の自衛官の姿は、見たことがある方々もたくさんいるとは思います。そこで起きたことをオブラートに包まずに描いているので、当時のことを思い出してしまったり、いろんな気持ちが生まれる方がいらっしゃると思うんです。でも、今だからこそ映して、風化させないという意味でも、すべての方に見てほしいなと思います。

白洲 渋谷のいる病院パートは被災者目線を担っているパートでもあります。被災地の方々が当時どんな風に考えていたとか、例えばどうやって情報を手に入れていたのかも。個人的に衝撃だったのは、東京にいた僕らと変わらないような状況だったこと。原発が爆発しても、遠くで花火のような音が聞こえたぐらいで、実際に何が起きたのかは分からなかったそうです。テレビのニュースで知った人もたくさんいて。むしろ目に見えない恐怖だからこそ、ものすごく怖い。衝撃的だったし、大事に表現した部分です。

三浦 三者三様に、命を救うために戦った人たちが描かれています。僕のパートでいうと、これだけ多くのいろんな人たちが日本のため、人の命のために戦ったことは感じてほしいポイント。自衛官の皆さんには当時のいろんなことを伺ったり、場所や機材を貸していただいたり、たくさん協力していただきました。こんな人たちが日本にいて、自衛官として守ってくれてるんだというのを感じてほしいです。

 

【番組情報】

3/13(金)放送

「3.11~東日本大震災15年 福島第一原発事故 命の戦い~」

フジテレビ系 後9時~10時52分

 

<あらすじ>

 2011年3月11日、最大震度7となる大地震が発生。さらに東日本を中心とする太平洋沿岸を巨大津波が襲う。この大災害の影で、福島第一原発は津波の影響で全電源を喪失、そしてメルトダウン。翌12日には1号機が水素爆発を起こし、放射性物質が拡散していく…  原発から20数キロ離れた病院で働く医師・渋谷鷹矢(白洲迅)は看護師長の五十嵐直美(礼真琴)らと共に患者の対応に追われていた。制御が効かない原発の状況を受け、広がっていく避難エリアとともに病院は籠城のような様相を呈していく。そして、そんな鷹矢に妊婦の妻・渋谷可奈(松本若菜)は夫の身を案じていた。  一方、陸上自衛隊・第1輸送ヘリコプター群の副操縦士の山岡義幸(戸塚純貴)らは、人命救助や救援物資運搬のため木更津駐屯地から東北へ向かう。さらに、第103特殊武器防護隊・隊長の大倉達也(三浦貴大)も原発の対応のため現地へ。  避難者や物資運搬にあたっていた山岡らだったが、原発への空中放水作戦を実施するよう指示が出る。高まる放射線量への不安を抱えながら山岡らが乗った自衛隊のヘリコプターが福島第一原発に向けて飛び立ち…。その2日後、大倉らも全国から集まった空港用特殊消防車7台を率い地上からの放水を目指していた。水素爆発の後が生々しい建屋の目前まで近づき、線量計の音が鳴り響く中、大倉は自らが最前線で指揮を執ることを決意し、決死の放水作業に挑んでいく。

 

Ⓒフジテレビ

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