ドラマ
原作は2022年に小説投稿サイト・エブリスタで開催した「comico 女性向けマンガ原作大賞」で大賞を受賞しcomicoでコミカライズした大人気WEBTOON。吉谷彩子が普通の幸せを望む主婦の景子、浅川梨奈が姉の景子が不幸でいることが何よりの快感だという妹の志保に扮し、W主演を務めているドラマ「どうか私より不幸でいて下さい」(日テレ系・毎週㊋深0時24分~)。「幸せとは?」という人にとって根源的なテーマを基に、姉妹が織りなすドロドロとしたマウント合戦が展開。今回の“姉妹対談”では、吉谷と浅川にドラマの見どころや撮影現場でのエピソード、理想の夫婦像などについて語ってもらった。
――原作の漫画と脚本を読んだ感想は?
吉谷 すごく挑戦的で攻めた内容の作品だなと思いました。面白くなるか否かは演じる側によって変化すると思ったので緊張感もありました。梨奈ちゃんと、しっかりコミュニケーションを取りながらやっていきたいなと思いました。
浅川 個人的になんですけど、不倫ものを演じたいっていう願望が昔からあったんです。やっと、お話をいただけたという喜びがありつつ、とんでもないことをやろうとしているんだなと。
――「とんでもないこと」というのは?
浅川 不倫もそうですし、志保のお姉ちゃんに対する執着。作品のタイトルにもある通りお姉ちゃんの不幸を求めているというか、お姉ちゃんの不幸が自分の快感になっていて。それが子どもの頃からずっと志保のルーティーンになっているところがとんでもないと思ったし、物語が進んでいく上で志保がやることも結構えげつない。こんな妹がいたら嫌だなと思いました(笑)。
――演じるキャラクターとは、どんなふうに向き合っていましたか?
吉谷 自分と景子の共通点はあるのかなっていうところが最初の役作りですね。これは全作品そうなんですけど、何か近いところを見つけて、その中で自分の引き出しを開けていろいろ探っていくんです。景子はすごく人を信じやすい女性。そこはちょっと自分と似ているような気がします。
浅川 志保はこんなにお姉ちゃんのことが好きで気になって仕方がないのに、なんであんなアプローチの仕方になってしまうのか。びっくりするくらいお姉ちゃんに執着している部分も含めて、脚本を読み進めていくと志保のことが愛おしく思えてくるんです。ただの嫌な女ではなく、どこかかわいらしかったり、ドラマを見ている人が共感よりも同情できるような志保にしたいなと思いながら演じていました。
――感情の変化を表現する芝居で難しいと感じた点はありますか?
吉谷 景子は人を信じやすいから、それがいい方向に向いたり、悪い方向に向かうこともある。その絶妙な塩梅をどういうふうに上手く演じればいいのか考えましたね。少しずつ夫である信一(瀬戸利樹)さんの異変に気付いていく感情をグラデーションのように表現できるのは表情なのかなと。その変化は意識していました。おそらく終盤はすごい顔になっているんじゃないかなと思います。
――お2人は今回が初共演ですが、お互いの印象は?
吉谷 梨奈ちゃんが現場にいるだけでみんなが笑顔になるし、明るくなるんです。本番では私の芝居をしっかりと受けてくれるからとても助かりました。志保は感情を出すシーンが多かったので、笑顔になったと思ったら急に無表情になったり。その切り替えは本当にすごい。志保を演じられるのは梨奈ちゃんしかいないです。
浅川 うれしいです! 劇中では志保から景子に何かを仕掛けることが多いんですけど、吉谷さんは全部ナチュラルに返してくださるんです。吉谷さんのベースのお芝居があるから漫画っぽくなりすぎない。こういう姉妹っているよなというリアルな感じが出ていたんじゃないかなと思います。私はこれまで攻めの芝居が多くて、受けの芝居はどちらかというと苦手。でも、吉谷さんが背中で教えてくださったので今後に生かせる勉強ができた現場でした。
吉谷 そんなふうに言ってもらえてうれしい。私たちは似ているというか思っていることが同じだったりするんです。
浅川 お互いが飼っているペットの話題や他愛のない話などをすればするほど、もしかしたらマインドが似ているのかもしれないと思うことが多くて。
吉谷 変な話なんですけど、同じタイミングでお腹が痛くなったり(笑)。
浅川 交互に痛くなったんですよね(笑)。
吉谷 前世でつながっていたのかもしれません。
浅川 笑いのツボも一緒なんです。
吉谷 手がぶつかった勢いで私が助監督さんの頭をなでてしまった時に笑いが止まらなくなってしまって(笑)。
浅川 2人でずっと笑っていました。吉谷さんはクールな印象があったんですけど結構天然。スタンバイしている吉谷さんを見ていたら1人でずっと揺れていて。私が「揺れているよ」って言ったら「えっ、本当だ揺れている」って。それが同じ日に3回ぐらいあって、そんな天然な吉谷さんを観察するのが楽しかったです。
吉谷 付き合いが長い親友と同じような居心地の良さがあるんです。梨奈ちゃんとのおしゃべりは撮影の合間の大事な息抜きでした。とても楽しかったです。
浅川 どんなに眠くても2人でしゃべっていると眼が冴えてくるんです。とても楽しい時間を過ごすことができました。
――景子、志保、信一の三角関係について現場で話をすることはありましたか?
吉谷 みんな、信一のことは「最低」と言っていました(笑)。
浅川 ホントに最低だと思います(笑)。
――信一役の瀬戸利樹さんはどんなリアクションを?
吉谷 瀬戸さんは「おいっ!」ってツッコんではいるんですけど…。
浅川 「そんなこと言うなよ~」っていう言い方も弱くて。私が「自分でも最低だと思っているでしょ?」って聞いたらしばらく考えて「俺は何も言えないけど」って、一応信一の味方をしていました。
――やっぱり、どこかに後ろめたさがあるんでしょうか?
浅川 後ろめたさしかなかったと思いますよ(笑)。
吉谷 確かに。もちろん、瀬戸さんはいい人なんですよ(笑)。ただ、いくら志保から仕掛けられたとはいえ、めちゃくちゃな裏切り方をするので、やっぱり信一は最低です(笑)。
――志保は信一に対してどんな思いを抱いていたと捉えていますか?
浅川 すべてはお姉ちゃんがいてこそなので、信一が普通にその辺にいる男性だったら志保は興味がないと思います。お姉ちゃんの旦那さんだったから、お姉ちゃんのものだったということが全て。だから、ある意味、信一もかわいそうですよね。何も知らず、本当に愛があると思っちゃったわけですから。
――作品のタイトルには「不幸」という文字が入っていますが、お2人にとっての“幸せな瞬間”は何ですか?
吉谷 家に帰った時、犬と戯れている時、おいしいご飯を食べている時。それと、サウナですね。ただ、ドラマの撮影期間中に行き過ぎて、今はちょっとお腹いっぱいかも(笑)。
浅川 えっ、そんなに行ったの? 毎日ハードだったのにすごいね。
吉谷 ほぼ毎日行っていたの。サウナでセリフを覚えることが好きで、個室だから集中して読めるんです。
浅川 私は寝ている時、猫と遊んでいる時。あとは、舞浜に行っている時。
――舞浜っていうことは「夢の国」ですか?
浅川 そうです。今回の現場でも、撮影が終わった後に何度も行きました!
吉谷 えっ、そうなの? 私のサウナのこと言えないじゃん(笑)。
浅川 すみません(笑)。クランクアップの日も皆さんからいただいた花束を持ってそのまま舞浜へ。私はパレードを見るのが好きで、今年の初めに「50回見る」という目標を立てたんですけど既に超えてしまったんです。だから“年間100回”に変えました。
――お2人にとっての“理想の夫婦像”は?
吉谷 今年結婚をして一番大事だなと思ったのはお互いに尊重し合うこと。信頼し合っているということが大切なんだなと実感しています。
浅川 ジャージでコンビニに行くとか、一緒にご飯を作って食べるとか。そういう当たり前の生活が実は当たり前ではないということをお互いに思っていて。だからこそ、その瞬間を幸せだと感じられたらいいのかなと。何気ない日常の中で「ありがとう」や「ごめんなさい」が言える夫婦になりたいです。
吉谷 どんなにケンカをしていても、そういう会話のコミュニケーションは大事だと思います。
――最後にメッセージをお願いします!
吉谷 1話の景子は幸せなシーンが多くて。だからこそ、この幸せがどう崩れていくのか。景子の表情をはじめとするちょっとした変化に気付いていただけたらなと思います。
浅川 至って平和な作品が始まったかと思いきや、すごい展開が待っていて。この作品が不倫ドラマであることに気付かされるシーンもたくさん出てきます。仲の良い姉妹がどうなってしまうのか、先が気になるストーリーはスピード感があるので最後まで見逃さずに楽しんでください。
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取材・文/小池貴之