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ブラジル通信の第15回で紹介したAGCのガラスルーフベンチ。同ベンチには「アンバサダー」がいて、ある有名選手が務めている。
それは、2000年のバロンドール(欧州年間最優秀選手)受賞者で、ポルトガル代表として2度のサッカーワールドカップ(W杯)に出場した、ルイス・フィーゴ氏だ。
4月末サンパウロで、日本とブラジルのマスコミ向けの、同ベンチお披露目記者発表会があり、フィーゴ氏はAGCの石村和彦社長とともに、ベンチの魅力を紹介。囲み取材にも応じた。
その中で同氏はアンバサダーを引き受けた理由について、「AGCは業界世界1位のグローバル企業であり、同社のベンチが世界最大級のスポーツイベントであるW杯で使用されるため」と答えた。また現役時代を振り返り、「ベンチに座っていたいサッカー選手は一人もいないが、ベンチではさまざまなことを考えた。それは重要な時間だった」と話した。
囲み取材が終わった後、AGCの好意で、筆者はフィーゴ氏に個別インタビューすることができた。与えられた質問数は3問だけ。そんな多忙の中でも、ベンチに並んで座り、紳士的に答えてくれたフィーゴ氏。日本や日本代表について聞いた。
選手時代、何度も来日しているフィーゴ氏。まず日本の印象を尋ねた。
「横浜でプレーしたトヨタカップは最高だったよ(2002年、レアル・マドリッド時代)。日本の人々はサッカーを愛し、他人を尊敬する心がある。それに情熱を持ってサポートしてくれた。友好的だし、ショーをリスペクトする精神も持ち合わせているね」。
さらに同氏は続ける。
「私は日本の文化が大好きなんだ。特に寿司がね(笑)」。
フィーゴ氏がバルセロナに日本食レストランを経営していたのはよく知られた話だ。
「レストランは今はもうないけれどね。バルセロナ時代に日本の食を知ったんだ。食だけじゃなくて、文化そのものに感銘を受けたよ」
2つ目の質問は、サッカーに話題を切り替えた。2002年日韓W杯にはフィーゴ氏も出場したが、ポルトガルは予選グループ敗退。予選会場が韓国だっため、日本でのプレー機会はなかった。フィーゴ氏のプレーを間近で見ることを期待していた日本人も多かったはずだが、同大会をどのように振り返るか。
「あの大会は、僕らにとっては決して満足できない記憶だね。日本でプレーを見せられなかったのも残念だ。でも確かに予選グループを突破できなかったけれど、W杯でプレーすることはいつだって最高の経験なんだ。結果は出さなければいけないけれど、そのこと自体を幸せに思うべきだと僕は思うよ」。
最後に日本代表についてはどのように見ているか。
「ユウト(長友佑都)は友だちだし、日本のサッカー選手はザッケローニとともに、ここ何年間でとても伸びたよね。非常に勤勉で、吸収力がある印象だ。彼らは今年のW杯を楽しめるはずだよ」
ブラジルでのW杯、日本代表は1勝も挙げられずに大会を去った。W杯を楽しめた選手はおそらくいないであろう。敗因の分析は必須ではあるが、同時にフィーゴ氏の言う「出場できた幸せ」が、4年後の勝利に向けた選手各自のモチベーションになってほしいと願う。
【筆者紹介】
夏目祐介 YUSUKE NATSUME
1983年東京生まれ。早稲田大学、英国ローハンプトン大学院(スポーツ社会学)卒業。2009年ベネッセコーポレーション入社、2013年同退社。W杯のためすべてを捨ててブラジルへ。現在ブラジル邦字紙「サンパウロ新聞」記者。