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薄給の研修医・育生(向井理)が、社長令嬢の楓(榮倉奈々)と結婚し、婿入りしたことで、遺産相続争いに巻き込まれていくブラックユーモアたっぷりの人間ドラマ「遺産争族」(テレ朝系)。井上由美子の脚本や岸部一徳、余貴美子ら親族を演じるキャストの怪演も話題を呼んでいる。このドラマの制作を指揮する内山聖子ゼネラルプロデューサーに、制作秘話に加え、内山Pのドラマづくりへのこだわりを聞いた(本誌25号の「裏方チャンネル」と併せて、お楽しみください)。
――そうそうたるキャストがそろいましたね。
そう言っていただくことが多いですね。3年ぐらい前は「ドクターX~外科医・大門未知子~」に出ていた人たちです(笑)。意図したわけじゃなく、あの世代で腕の良い俳優さんたちを集めていくと結果的にこうなりましたっていうことなんですけど。皆さん、台本がまったくない段階で出演を快諾してくれて。それで、井上さんもまた、あて書きで彼らに秀逸な言葉を吐かせてくれたんですよね。
――冴えたセリフが本当に多いと感じます。脚本家に力を十分発揮してもらう術があるんでしょうか。
キャスティングが良い枷(かせ)になったのかもしれないですね。原作があるわけじゃないし、刑事ドラマのように事件が起きて解決するという基本の流れもない。まったくの自由の中で、脚本家に枷を作るとしたら、キャスティングです。同じ意地悪な人物でも、(ドクターXにも出演した)北大路欣也さんが演じるなら迫力のある怖さがあって、伊東四朗さんなら表面はにこやかなんだけど実は……とかね。
――こんなに意地悪のバリエーションがあるものかと感心してしまいます。
“記号”になってないんですよね。ドクターXはいい意味で記号だったけど、今回はお金で人が変わる話で、家族でも言いにくいことがたくさんあるので、言いにくいからやり過ごそうとしたり、本性がむき出しになってしまったり。
取材をしていくと、たとえ10万円の遺産でも、兄弟より1円でも多くもらいたいと思うものだったり、姉妹は自分より学費の高い大学に通わせてもらったのに遺産は等分なのかって不満を持つ人がいたり、すごい話がたくさん出てきたんですけど、そういうリアル感を井上さんは持っているんですよね。だから育生の周りは、法事で親戚が集まるとああいう人いるよねっていう人ばっかり(笑)。
――門扉をガタガタやったり、カーテンにくるまったり、ユニークな演出も印象的です。
あれは監督の演出ですけど、おっかしいよね。やらないでしょう。大人が大人げないって面白いけど。「きゃっ」ってカーテンに隠れるの、人によってはかわいいかもしれないけど、室井(滋)さんがやっちゃダメですよね(笑)。
――向井さんはテレ朝の連ドラでは初主演。どんな期待をこめて選ばれたんですか。
周りが魑魅魍魎(ちみもうりょう)というのは最初から決めていたので(笑)、真ん中にいるムコ殿は、中は熱くてもひょうひょうとして見えるタイプのほうが、宇宙人が入ってきたみたいで面白いかなと。向井くんは正義を口にしていても「どこか含んでるだろ」「ちょっとウソ言ってないか?」みたいなアンバランスさがあるんですよね。サスペンス性というか。そういう俳優さんが私は好きで。おかげさまで“黒い向井”がウケてるみたいで「本当は育生、悪いんでしょ?」ってみんなに聞かれます(笑)。
――確かに育生は腹に一物ありそうな。
オリジナルでまったく先が見えない状態で作っているので、キャストはみんな最終回どうなるんだろうって言いながら飲んでます。
――飲んでるんですね。楽しい大人の現場という感じがしますね。
そうなのかな、意外と子供っぽいですよ、みんな。親戚の法事で集まって巻き寿司つまんでる雰囲気です。この前もオンエア見ながら居酒屋で飲みましたけど、終わったら帰ればいいのに、結局朝まで飲んでいて。飲み方、大人げないです。「私は仕事があって行けなかったのに」とか悪態メールが来るし(笑)。バックステージではみんな、仲いいんですよね。