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9/17(土)公開の映画『怒り』完成報告会見が7/11に都内で行われ、主演の渡辺謙をはじめ、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮﨑あおい、妻夫木聡ら豪華キャスト陣と監督・脚本の李相日、原作者・吉田修一が登壇した。
本作は、ある殺人事件の容疑者として浮上した3人の“疑わしき男”と、彼らを取り巻く人間関係を、東京編、沖縄編、千葉編という3つのパートで描いていく群像ミステリー。
『許されざる者』に続き2度目の李監督作品の主演となる渡辺は「本当に素晴らしい俳優たちが、それぞれのパートで魂をぶつけ合う映画になったと思います。またそれをリードしてくれた李監督に敬意と尊敬を表するばかりです。とても難しい作品ではあるとは思いますが、たくさんの方に観ていただけたら」と胸を張った。
トークコーナーでは、それぞれのパートごとに撮影秘話を。
まずは、東京編。
大手通信会社に勤める同性愛者・優馬を演じた妻夫木は、アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた『悪人』に続き、李監督とは3作目のタッグ。今作への出演、そして優馬役も、李監督に直談判したそう。
妻夫木「『悪人』の時もそうだったんですけど、原作に心をわしづかみにされて。正式にオファーをいただいて、また『悪人』の時のような奇跡が生まれるんだろうなという直感がありました。(完成作を)観て、その直感は正しかったんだと、今思っています。監督の演出はもちろん、役者の皆さんの芝居が本当に素晴らしいんです。それって、すごいことだと思う。一人ひとりの覚悟や思い、エネルギーがぶつかってできた作品。また今回一番うれしかったのは、李監督が『今回は妻夫木に任せるから』と預けてくれたこと。そして作品ができあがった時に『すごく助けられた』と言っていただけたことも、うれしかったです」
妻夫木演じる優馬と同居を始める‟疑わしき男”の一人・直人を演じた綾野は李組初参加。
綾野「(李監督は)厳しいとは聞いていたけど、妻夫木さんが監督と何作もやられていたということで、僕はずいぶんいい環境だったと思っています。そのなかで、李監督は妻夫木さんが生きた優馬と直人の関係性をとにかく現場で大事にしてくださって、きちんと愛情を注いでくださいました。映画は虚構ではありますが、そこにちゃんと“本当”を求めてくださる李監督の意識に対して、我々がどこまでその“本当”を紡げるかというのをしっかり考えた2週間半は、すごく幸せでした」
意外にも妻夫木と綾野は本作が初共演。お互いの印象についても語った。
妻夫木「一つの作品に向かう姿勢がこんなにも同じ目線、同じ気持ちでいられた人は本当に初めてだったので、剛との出会いには感謝しかないです。剛がいたから僕も優馬として生きることができたし、多分剛も同じように思ってくれていると思うんです。だからお芝居をするというよりも、その2週間半の中で、僕たちはただ“生きる”だけでよかった。『悪人』の時は、撮影が終わった後に『ようやく終わった』とほっとしたけど、今回は脱力感と無力感が大きくて。直人に対する自分の思いなども重なって、終わってしまうのが悲しかったです」
綾野「妻夫木さんに引っ張っていただき、大変いい関係になれました。すべてが愛おしい時間でしたね。そこまで持っていくのに一筋縄ではいきませんでしたが、こうして同じベクトルに向かって妻夫木さんとできたのが本当に幸せでした。今ではもう親族みたいな気持ち。妻夫木さんがテレビに出てたりすると『さとく~ん』って手を振ったり(笑)。すみません、イチャイチャするのやめます(笑)」
そんな妻夫木と綾野それぞれと共演した高畑充希からの「撮影の合間に、お互いがお互いのことを話している時がすごくいい顔で。本当に好きなんだなって思って、すっごい苦しくなりました(笑)」という暴露には、2人とも思わず顔を見合わせて爆笑していた。
また別パートの森山から「妻夫木さんの(同性愛者が集まる) パーティーでの居方がすごく絶妙で素晴らしかった(笑)」と言われた妻夫木は、役作りについても言及。
妻夫木「今回は役作りでこんなにお金使ったことないってくらい、2丁目に通ったり、パーティーしたりとか、いっぱいお金使いました(笑)。なかでも剛とは一緒に住んだりもしたし、いろんな思い出がすごく残っています。優馬として剛と過ごした日々は、僕のなかでは“真実”みたいなものになっていて。それは別にゲイに目覚めたとかではなく(笑)、直人として生きる剛の表情が脳裏に焼き付いちゃっているので、その表情をそっくりそのまま映画の中で見られたっていうのは感動的でした。だから試写でもほかの人が泣いていない部分で泣いてしまったりして、頭おかしくなったと思われたんじゃないかって……イチャイチャしてすみません(笑)」
続いて、沖縄編。
李監督からの熱烈オファーを受けたという森山は、無人島でサバイバル生活を送る‟疑わしき男”の一人・田中を演じた。
森山「李監督には心をかき混ぜられました。たくさん話し合って、いろんな意見がすべて蓄積していって、すべてのコミュニケーションが宝物でした。撮影では、僕が役柄をどう捉えていこうというよりも、その空気の中でただそこに立っているだけでいいのかもしれないなって。そんな思いにさせてもらえたのが非常によかったです」
また、撮影前から1人で無人島に泊まっていたという。
森山「だって仕事で無人島に泊まれるなんて、そんなステキなミッションないじゃないですか! ステキな経験でした。いろいろ流れ着いてくるので、コップを拾ったりとかもしました(笑)」
母親と共に沖縄の離島に引っ越してきた女子高生・泉を演じた広瀬は、自ら熱望してオーディションで役を勝ち取った。
広瀬「私と同じ年の泉という女の子が感じた感情が複雑というか、残酷過ぎて私もその時の記憶があんまりなくて……。すごく苦しかったんですけど、この作品に参加させていただけたことが自分の中で財産になりました」
だが、李監督の厳しさには苦労もあったよう。
広瀬「監督がご飯が食べている姿を見て、『監督も人間だ』って自分に言い聞かせていました(笑)」
これには、李監督含む全員が大爆笑。
広瀬「本当に分からなくなり過ぎちゃって、監督に『監督バカヤローって叫んでいいよ』って言われたので、叫んだりもしました。だけど余計に悔しくて、でも立ち止まっている場合でもなくて……。すごい経験をさせていただきました」
最後は、千葉編。
渡辺演じる洋平と同じ漁港で働き始める“疑わしき男”の一人・田代を演じた松山も李組初参加。
松山「(李監督の厳しさについて)僕もいろいろ噂は聞いていたんですけど、みんな嫌そうに言わないんですよね。『でも何か好きなんだよ』っていうのがすごく感じられる。それは監督が愛を持って接しているからだろうし、だからこそみんなも監督を愛しているんだなっていうのを感じられる現場でした。短い期間ではありましたが、とても充実した時間だったと思います」
田代と付き合い始める洋平の娘・愛子を演じた宮﨑も、李組は今回が初。
宮﨑「撮影自体は2週間くらいだったんですが、今までの人生の中で一番長くて、一番濃厚な2週間でした。この作品に関われたこと、幸せに思います。(李監督は)もちろん厳しかったですけど、ただそこには愛情があるということもきちんと伝わってくるんです。私はあまり普段人と話をしないんですけど、今回は監督とものすごく話をしました。今までで一番、監督と話をしたと思います。台本を読んでも読んでも答えが出なくて、現場でいろんなものをはがされていくような感じで。すごくちゃんと見ててくださるっていうのが伝わってくるので、ありがたいなって思いました」
主演の渡辺は、“疑わしい男”田代と付き合う娘・愛子を心配する父・洋平役で、宮﨑と親子役に挑んだ。
渡辺「あおいちゃんが今までやってきた役とは違う世界へ踏み込んだ思いみたいなものを最初から感じていたので、それを見届けるのが楽しみでした。彼女は本当にストイックに役と向き合うし、すごく真面目なんです。現場でも基本一人でいるんですが、そんな彼女をあえて呼んで一緒にいるようにして。結果的にそこにいるのが当たり前っていう関係性を築けたので、すごくよかったなって思っています。(宮﨑に対し)面倒くさかった?(笑)」
宮﨑「いえいえ、とんでもないです(笑)。私も現場で『お父ちゃん、お父ちゃん』って呼ばせていただいて一緒にいるのをすごく自然に感じていたし、2週間しかいなかったのが信じられないくらい、濃い時間を共有させてもらった気がします。私にとっての宝物です」
渡辺「オレは本当に、あおいちゃんに幸せになってほしいと思うからね!」
と、“父親愛”にあふれる発言も飛び出した。
『怒り』は、9/17(土)より全国東宝系にてロードショー。
<作品情報>
9/17(土)公開
映画『怒り』(配給:東宝)
監督・脚本:李相日 原作:吉田修一(中央公論新社刊)
出演:渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛
広瀬すず 佐久本宝 ピエール瀧 三浦貴大 高畑充希 池脇千鶴
宮﨑あおい 妻夫木聡
公式サイト:http://www.ikari-movie.com