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ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(毎週水曜後10時・日テレ系)の主題歌「空と青」を歌う家入レオ。脚本家の北川悦吏子&[Alexandros]川上洋平と組んで作ったこの曲が、彼女にとってターニングポイントになったという理由は? デビューから9年間の歩みを振り返りつつ、今の家入が持つ価値観の真相を深く語ってくれた。
好きなことを生業にするということは、
苦しいことが倍に、うれしいことは100倍になる道
――レオさんは、今年でデビュー9周年。10年目に入るキャリアをお持ちですが、振り返るとどんな日々でしたか?
家入 自分の活動の幅や視野を広げていくことは、楽しい事でもあるし鍛錬でもあると感じた9年でした。
――というのは?
家入 好きなことを生業にするということは、苦しいことが倍に、うれしいことは100倍になる道だと思うんです。生きることって、いろんなことを知っていくことだとも思うので、その道のなかで、今までの自分じゃ通用しないと気付けることにどれだけ出会うかが大事だという気がするんですよ。自分をアップデートするために、過去の自分をいい意味で壊して構築していく。それはうれしい鍛錬でもあるんですけど……。
――同時に、苦しいことでもありますよね。自分を壊すって、なかなか勇気がいることだから。
家入 そうですね。私はデビュー当初はシンガーソングライターとして作詞・作曲をしていましたが、提供曲をシンガーとして歌うことも増えてきて。そんななかで、歌を作ることと歌うことはまったく別ものなんだなということに気付いたんです。
――そうなんですか?
家入 曲を書くということは、自分のオリジナリティを出す作業。でも、歌を歌う時は、自我よりも“いかに人に伝えるか”が大事なんだなって。だから私、曲を作ることも歌うことも、両方大好きなんですよ。どちらかを選択しないといけないのかなと迷っていた時期もありましたが、今はどちらの自分でいいんじゃないかと思うようになって。実際、提供していただいた曲を歌うことで学ぶこともとても多いので感謝してるんです。いろいろなアプローチを試すことは、苦しくもあるけど楽しいことでもあるので。
――まさに、学びながら進んできた9年間。
家入 「空と青」の歌詞を書いてくださった北川悦吏子さんと打ち合わせさせていただいた時、北川さんが、「1回聞いて覚えてもらわないとダメなのよね。カラオケで歌ってもらえるような曲にしないと」とポロッとおっしゃっていたんですが、その言葉にも本当に学ばせていただきました。もちろん、これまでも“多くの人に聴いていただく”ことは意識していましたが、どうしても“自分の思いを伝えたい”という考えが先行しすぎてしまうこともあって。分かりやすいものを作るってある種こわいことでもあるんです。だからこそ、北川さんの言葉からは覚悟と器の大きさを感じたんです。
――「空と青」の制作エピソードは最近のお話ですが、北川さんのお言葉に心が動くのは、これまでの経験があったからこそですよね。
家入 “歌が大好き!”という気持ちだけで歌っていた時代は、自分の経験だけを歌に反映させていました。でも、別の扉を開くためにはその気持ちを制御してみようとか。苦しくもある作業でしたけど、そうしてみたからこそ気付くことがたくさんあったんですよ。歌と人をつなぐのが歌い手の役目だということに気付けたことは大きかったのかもしれないです。
「誰が聴いても聴く人を包み込めますように」
という願いのもと、かみ砕いて歌った「空と青」
――北川さんが作詞を、[Alexandros]の川上洋平さんが作曲を手掛けた「空と青」は、ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」の主題歌です。北川さんが紡ぐ言葉は、歌っていてどう感じましたか?
家入 脚本を生業にされている方が書く歌詞だなと思いました。ミュージックビデオの撮影をしている時に、シーンごとに撮っていくと、撮り始めた時よりも最後のほうが歌への鮮明度がより増したんですよ。一つ一つの言葉が強くて、ドラマを撮影する俳優さんの心境ってこういう感じなのかなとも思いました。
――だからなのか、俯瞰で見ているような歌い方だという印象がすごく強かったです。それが聴いていてすごく心地よくて。
家入 そう聴こえていたならとてもうれしいです。歌うからには私らしさを感じていただきたいとは思いつつ、こちらから何かを限定したり、選ぶことはしたくないとも思っていたので。誰が聴いても聴く人を包み込めますようにという願いのもと、かみ砕いて出した表現なんですよ。今は、コロナ禍もあって、耐えなくちゃいけないことがたくさんある時代ですよね。だからこそ、エンタメに触れている時は難しいことを考えずに心を開放してほしいなって。今リリースする意味を感じてもらえたらいいなという気持ちで歌いました。
「あの出来事があったから今の喜びがあるんだね」って、
20~30年後に言えてるといいなと思いながら曲を作っています
――カップリングには「Moon」と「未完成(tofubeats remix)」が。この2曲はレオさんが作詞・作曲をしたナンバーです。
家入 カップリングは、自分の言葉で伝えられる曲をと思って。「Moon」は、ストックの中から、“今、まさしくこれがいいんじゃないか”と思って選びました。
――今これだと思ったのは?
家入 私は、悲しみも喜びも、今この瞬間しか鮮明ではないと思っているんです。どれだけ絶望しても、数年後には笑い話にできるのが人間の強さじゃないですか。たとえば、失いたくない人を失って、その時は取り乱したとしても、いつかはその人がいなくても大丈夫な自分になっていく。ならば、大丈夫じゃない自分をちゃんと残しておきたいんですよ。そう思って書いた曲が「Moon」。立ち止まることなく新月から満月へのサイクルを繰り返している月と、苦しみや喜びを経て脱皮していく人間をリンクさせて、「Moon」というタイトルにしました。
――そのテーマを、今の時代にこそ伝えたいと思ったんですね。
家入 そうですね。2020年はやっぱり、地球に生きる人間としてターニングポイントに立たされた年だと思いましたから。自分を含め、真実に向き合っている人が多かったのかなとも思いますし、当たり前の価値観がどんどん変わっていくと思うんですよ。私の友人には、東京にこだわらなくても活動ができるだろうということで遠方に移住した人もいますし……。20~30年後には、「時代と時代の継ぎ目となったあの出来事があったからこそ、今の喜びがあるんだね」ってみんなで言えてるといいなって。そう思いながら曲を作っている毎日です。
――まだまだ不透明な状況が続く2021年の始まりですが、今後のレオさんの展望を聞かせてください。
家入 表現することをもっともっと磨いていきたいです。磨いていくことで、受け手側の皆さんの日常に少しでも彩りを添えられるといいなって。というのも、エンタメは不要不急ではないといわれはしましたが、それがないと人は光を見失っちゃうんだなと思ったんです。生きることだけをテーマに日々を過ごしていくと、仕事をして家に帰るだけで日々が終わってしまうじゃないですか。医療の最前線で戦ってらっしゃる方が「自分の人生のテーマ曲が日々頭の中でずっと鳴っています」とおっしゃっているのを聞いたことがありますし、少しでも誰かのそういった力になれたらいいなと思います。
「空と青」
発売中
Colourful Records
初回限定盤
1800円+税
1.空と青
2.Moon
3.未完成 (tofubeats remix)
4.空と青 (Instrumental)
5.Moon (Instrumental)
通常盤
1200円+税
上記5曲を収録