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“大人になること”の痛みや葛藤が追体験できる作品になりました。
シリーズ20周年を迎えたアニメシリーズ「デジモンアドベンチャー」。大学生となった主人公の八神太一とパートナーデジモン・アグモンの深い絆を描くことで、2028年の未来が描かれた「02」の最終回へとつながるストーリーが展開される。この作品に、新キャラクター・メノア役で松岡茉優を起用。デジモンと一緒に大人になったと自負する松岡に、本作の見どころと「デジモンアドベンチャー」シリーズの魅力をたっぷり聞いた。
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──子供の頃から、「デジモンアドベンチャー」シリーズの大ファンだったそうですね。大好きな作品から声の出演のオファーがあった時のお気持ちは?
松岡 すべての作品は巡り合わせだと思うんです。最近では、ずっとお仕事をしたいと思っていた白石和彌監督と、『ひとよ』(2019年公開)で初めてご一緒できたんですけど、この映画の企画が立ち上がった3年前に撮影となっていたら、私ではなかったと思うんです。私が演じた役は、今の私だから年齢的にも合ったと思うので。今回の『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』にも同じことがいえるんですよね。新しいキャラクターが生まれたタイミングで、デジモンと一緒に大きくなった“デジモン世代”の私に出演のお話をいただけた。とても幸運な経緯だったと思います。ただ、大好きな作品だからこそ、生半可な気持ちではできないし……専門職の声優さんがいらっしゃる中に、俳優がお邪魔するという意味でも覚悟をもって挑戦したつもりです。
──『バースデー・ワンダーランド』(2019年公開)など、声優のご経験がある松岡さんでも、プレッシャーは大きいものですか?
松岡 演じるという意味では、声優も女優も同じなのかもしれないですけど、私が普段やっている映像でのお芝居と声のお芝居は全然違うんです。きっと、監督が、声を入れた後にいろいろと考えた上で変更をしたんでしょうけど、実写の映像では、撮った後に変わるなんてあり得ないことなので驚いたんです。“声を出すこと”に対し、どんなことが求められるのだろうと考えるキッカケになりました。
──今回の作品には、シリーズ開始当初は子供だったキャラクターたちが大人になって登場しています。その姿を見て、感慨のような気持ちはありましたか?
松岡 まず、今回の物語は太一とアグモンの一区切りになるとお伺いしていたので、純粋にどんな物語になるのかが楽しみでした。でも、冒頭で、太一とヤマトが焼肉屋さんでビールを飲むシーンを見た時には「え、お酒飲めるの!?」ってビックリして。しかもジョッキで(笑)。その後、店内にいた女性の方が倒れる場面を目撃して、太一とヤマトはその人を助けるんですけど、そのシーンにはキュンとしました。私はふたりの妹世代なので、「私たちのお兄ちゃんはやっぱり頼り甲斐があるな!」って(笑)。
──松岡さんが演じたメノアは、今作のテーマでもある“成長”“絆”に大きく関わるキーパーソンですが、このキャラクターに関して思ったことは?
松岡 “大人になりたくない”“成長したくない”という願いを抱えているメノアは、過去の思い出だけで生きていこうとしている人。私は、メノアのそのマインドに共感しましたね。前進していくには半端じゃないエネルギーがいるから、いい思い出があるならそれをゆっくりかじって生きていきたいって私も思いますもん(笑)。だからこそ、何があっても諦めない太一やヤマトに子供のころから憧れてきたんだと思います。
──松岡さんのどんな経験がメノアとリンクを?
松岡 私がすがりついていたのは『桐島、部活やめるってよ』(12年)です。まだお仕事がさほど多くないなか出演できたあの作品は、(第36回)日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞したり、いろいろな評価をいただきました。だから、「私には『桐島~』があるから大丈夫!」って思い込んでいる時期があったんです。前に進むことをあきらめていた。今回の『デジモンアドベンチャー』に、「過去を振り向いてるだけじゃだめなんだ」という意味のセリフがあるんですけど、この言葉を聞いて、『桐島~』にすがりついていた頃の自分を思い出しました。
──そういう意味で、『デジモンアドベンチャー』も、今まさに前に進む勇気が持てない人の背中を押すキッカケになるかもしれないですね。
松岡 私自身、ここ4~5年は“大人になりかけているのかな”と感じる時期だったんです。だから、今回の『デジモンアドベンチャー』を見て、ある種の“追体験”ができたんですね。デジモン世代である私たちも、もう一度大人にしてもらえるようなシーンがたくさんある。大人って、なりたくてなるわけじゃないし、ならざるを得ないままなってしまった人が多いと思うんです。そんな、なんだか、モヤッとしたまま大人になってしまった方に、“大人になるってこういうことなのかもしれないな”と感じてもらえる映画になっていると思います。
──では最後におまけ話を……。リアルな自分にパートナーデジモンが現れたらどの子がいいかなとか、想像したことはありますか?
松岡 そういう妄想はたくさんたくさんしました(笑)。それが結構悩ましくて。普段はかわいい姿をしていても、成長するとビックリするような姿になる子もいるので。だから、自分が好きな姿をしたデジモンを成長期ごとに組み合わせて考えたりしてました(笑)。それでいうと、私は、テイルモンの完全体=エンジェウーモンがすごく好きで。すごくナイスバディで……大人になると女の子ってこんな体になるんだ~って妄想してたんですよ。でも、残念ながらなりませんでした。ならなくてビックリしました(笑)。
<作品情報>
デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆
公開中
原案/本郷あきよし 監督 田口智久 脚本/大和屋暁
声の出演/花江夏樹、細谷佳正、三森すずこ、田村睦心、吉田仁美、池田純矢、榎木淳弥、M・A・O、坂本千夏、山口真弓、重松花鳥、櫻井孝宏、山田きのこ、竹内順子、松本美和、徳光由禾、片山福十郎、ランズベリー・アーサー、朝井彩加、山谷祥生、野田順子、高橋直純、遠近孝一、浦和めぐみ、小野大輔、松岡茉優