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【インタビュー】「定子を愛すことを人生の中で大事にすると決めていた」、大河ドラマ「光る君へ」塩野瑛久が語る一条天皇の愛

TOPICS 2024.08.20

 

 

 大河ドラマ「光る君へ」は、先日の第31回でついに「源氏物語」誕生のシーンが描かれた。まひろ/紫式部(吉高由里子)が道長(柄本佑)の願いを聞きいれ、一条天皇(塩野瑛久)にささげるために書いたという設定だ。8月20日にクランクアップを迎えた塩野が、「源氏物語」を初めて読んだシーンや最愛の人・定子(高畑充希)とのシーンなどについて語った。取材会には内田ゆきチーフ・プロデューサーと、「歴史探偵」の河井雅也チーフ・プロデューサーも出席した。塩野は8/28(水)放送の「歴史探偵」に、柄本と共にゲスト出演する。

 

 

 

——クランクアップを迎えました。撮影期間を振り返っていただけますか。

 

塩野:すごく濃かったなという印象ですね。僕にとって初めての大河ドラマだったので、あっという間といえばあっという間にも感じましたし……。一条天皇と向き合った時間は、楽しかった期間というのは最初の方に終わってしまって、あとはずっともがいて苦しんで、そして自分の大切な人との死とも向き合うことになり、すごく濃い時間が流れていたように思います。

 

内田:このドラマで、オーディションで決まった役の中では、一条天皇というのは本当に大きな役で、かつ難しい役でもあったと思います。まず非常に寵愛していた定子がいて、最初は年上のお姉さまとして慕っていたけれど、だんだん一条も大人として成長していく、そういう全てを見守ってくれていた定子がいたんだけど、今度はずっと年下のはるかに子供っぽい姫・彰子(見上愛)がやってきて、それもまた妻にしなければいけないという。両方にとって魅力があるように演じてね、と最初にお願いしました。

 

平安時代は私たちも初めてですが、塩野さんももちろん初めてで、かつほかの貴族たちとまた天皇は違いますし、難役だったと思います。でも、すごく成長されたなと思っていて。脚本の大石静さんやチーフ演出の中島由貴ともかなり早い段階で「最初こそ、ちょっと心配は確かにあったけど、何よりも本人がすごく頑張ってくれて、いかにこの役をきちんと演じようとしているかというのが本当によく伝わってくるよね」と話していました。最近はそんなもう、努力なんか飛び越えたかのように、一条天皇といえば塩野さんと、視聴者の方々もスタッフも誰もが思えるようになったので、私としては本当に感謝しています。(隣にいる塩野に)ありがとう。

 

塩野:泣いちゃう。

 

 

——初めての大河ドラマ、所作やその他のことで苦労はありましたか?

 

塩野:所作は、僕は教えてもらうことがそこまで多くなかったです。というのも、やっぱり天皇なので、位が一番上でそれ以上はないので。例えば、目上の人に相対するときにしなきゃいけない動きっていうのは僕にはなかったので、皆さんほど苦労はなかったかなと思います。

 

内田:ただ主上、結構走ってますよね。たしか次回もひと走り……。

 

塩野:ありますね。定子に会いに行くときとか。次回も走ります。結構走る天皇です。

 

内田:長袴という、自分の身長よりはるかに長い袴をはいて裾を後ろに流して動いているので、走るのは大変ですよね。

 

塩野:結構、大変ですね。でも、走りなんかも入れてくださったから、そのおかげで(長袴などに)めちゃめちゃ慣れました(笑)。あとは撮影期間中、日焼けには気を付けていました。外に出るときは、首まであるフェイスカバーを着けて、日傘もさして。それが今日のワンシーンでクランクアップって分かってから、このところ少し油断がありまして……。今日みんなに「ちょっと黒くなった?」って言われました。ちょっと日に焼けて、ちょっとバレました。

 

 

——定子とのシーンがどれも印象的でした。第28回のシーンについて、撮影を振り返ってください。

 

塩野:一条天皇と定子は、近くにいて支え合っているようで、どこかすれ違い続けているような感じだったかなと僕は思っていて。一条天皇はもう定子しか見えないぐらいの寵愛ぶりだったと思うんですけど、定子はいろんなことが目に入ってきて、全てを救いたいし支えたいし、どうにかみんなに幸せになってほしいという気持ちがきっとあったと思うんですよね。定子は“二人でいれば何とかなる”っていうようなことだけではなかったと思うので。

 

最後のやりとりで、定子が実は今までこうだったということを告白して、一条天皇は「いつわりでもよい」、定子の心が自分に向いていなくてもいいんだということを言って。僕の解釈では、一条天皇は分かっていたんだろうなと思います。そのとき初めて定子の真意を知るというより、自分の中でずっと全て分かった上で、「定子」「定子」と言っていたんだという思いも乗せながらやりました。

 

一条天皇も、まだ若いは若いと思うんですけど、ずっと向き合い続けてきた女性の心の機微だったりとか、そこまで見えていなくはないのかなと思ったので。そこも踏まえた上で、ずっと定子を見ていたのじゃないかなと思っていました。

 

 

——定子は一条天皇に心からの愛情を向けていたと思いますか?

 

塩野:正直、どちらでもよかったっていうのが正直な、僕自身の感想ですね。そこは自分に向いていようが向いてなかろうが。もうとにかくこの狭い世界で自分にとって寄り添える人が定子で、そこを信じるといいますか……。定子のことを愛すということを、多分もう一条の人生の中で大事にするということを決めていたと思うので。定子がどうであろうと。もちろん政もすごく大事だと思うんですけども、そこだけではない、大事にしなきゃいけないものっていうのは多分、一条天皇の中で見えていたのかなと思います。

 

 

——このドラマでは「源氏物語」は一条天皇のために書かれ、一条天皇は桐壺帝のモデルにもなっているという設定です。「源氏物語」との関係性をどのように演じましたか?

 

塩野:一条天皇はそもそも書物や物語が好きで、その中で「源氏物語」に出会います。その前に「枕草子」ですね。定子の面影を追った物語を一条天皇がもらい受けて、それを本当に擦り切れるほど読んで、そこにしか心が持っていかれないし。定子がいなくなった一条天皇にはきっと書物や文学やそういうものが何よりも心のよりどころになっていたのかな思います。

 

一条天皇にとって「源氏物語」は、1ページ読んで、読んだらやっぱり圧倒的な文章力といいますかワードセンスなども含めて優れていて、自分の心に入り込み過ぎてしまって、(心が)えぐれてきてしまって……。自分の過去を追体験させられるような内容だったので、一度そこから目を背けて、いったん置いておくことにした、というような。

 

あくまで僕は「源氏物語」を与えられる側なので、受け取って受け取ってそこに対してどう感じたのかっていうところを素直に取り込んでやっていきたいと思っていました。

 

この大河ドラマでは、僕は現場に入ってから気づくことがたくさんあって、その場に立ったり座ったりしてみて一条天皇の思っていることや考えていることをより感じたし、一条天皇が受け取る言葉にも初めてそこで本当にぐっときて。もちろん台本を読んで、自分なりにこうかなって解釈もして、台本から持ち出すには持ち出すんですが、やっぱり現場へ行って世界感の中に入るとまたちょっと違った解釈も見出されていくので、そういうところを大事にしてずっとやってきました。

 

 

——道長役・柄本佑さんと共に8/28(水)放送の歴史探偵『「光る君へ」コラボスぺシャル』に出演したことで、一条天皇への理解がさらに深まるようなことはありましたか?

 

塩野:もちろんです。佑さんと一緒に「ほー!」と言いながら(探偵たちの調査報告を)見ていました。道長と一条天皇は、後半に行くにつれてバチバチになっていく印象を抱かれがちだと思うんですけど、やっぱりそこには信頼関係みたいなのもあったんじゃないかって、この「歴史探偵」を見ても感じましたね。

 

道長が一条天皇にささげるものが一条天皇の好きな書物、「源氏物語」だっていうところからして、道長も一条天皇のことを深く知ろうとしていただろうし、一条天皇もそういう道長を受け入れていただろうし、意見の対立はあれど、お互いにお互いじゃなきゃという思いはあったんだろうなと思っています。

 

河井:「歴史探偵」は、NHKアナウンサーが探偵役になって歴史の謎に果敢に挑んでいくという歴史教養番組です。新しい発見やこれまで取り上げられてこなかった事実などにフィーチャーするところが特徴です。今回は「源氏物語」がテーマで、柄本さん、塩野さんにご出演いただきます。劇中では緊張感漂う二人ですが、「歴史探偵」のスタジオでは全く違います。日曜夜8時のあの人たちの素顔はこうだったのかというところも分かる回になっていますので(笑)、ぜひお楽しみに!

 

(「歴史探偵」の“探偵所長”こと番組MCの佐藤二朗からVTRメッセージがあり、塩野が収録中、まるで自宅リビングにいるかのようにひざを抱えて座りだすほど、調査内容に夢中になっていたことが明かされる)

 

塩野:無意識ですね。全然、覚えてないです(笑)。

 

 

取材・文/赤坂麻実

 

 

(放送情報)
「歴史探偵」光る君へコラボスペシャル2 源氏物語
NHK総合 8/28㊌後10時~10時45分

大河ドラマ「光る君へ」
NHK総合 毎週㊐後8時~8時45分
BS 後6時~/BSP4K 後0時15分~、後6時~

 

 

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