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W杯期間、日本代表がキャンプを張るサンパウロ州イトゥ―市のホテル「スパ・スポート・リゾート」に取材に行ってきた。「ザックジャパン」のキャンプ地に決まって以来厳戒体制が敷かれる中、日本とブラジルのマスコミ向けに施設が公開されたので、4月16日に訪問した。
通常営業では、同ホテルに宿泊するのは、ダイエットをしたい人や団体であり、食事や運動のプログラムを提供している。緑に囲まれた14万平方メートルの敷地には、フィットネスジムや温水プール施設、あるいはマッサージ施設など、体をケアするための設備が充実し、屋外プールやバーベキュースペースなどレジャー施設も備えている。
またオーナーが日系2世ということもあり、マッサージ施設はオリエンタルな空間が創られていて、選手たちがリラックスするにはよい環境と言えるだろう。
しかしこれらはザックジャパンにとってあくまでおまけの要素。問題なのは、日本サッカー協会(JFA)がキャンプ地の条件として要求した、宿泊棟とサッカーのグラウンドの改築が未だ完成していないことだ。
選手たちが寝泊まりする宿泊棟は大幅に改築を行い、現在も工事の真っ只中。外装から判断する限り完成にはまだ遠そうで、骨組がむき出しのところもある。内観は前日の雨によるぬかるみを理由に不可となったが、工事が遅延し公開できる状態にないのではと疑いたくもなる。
当日案内してくれた宿泊部門マネージャーのルシアーノ氏によれば、同棟内にはミーティングルームやレストランが新設される。日本サッカー協会(JFA)は風呂の設置を要求したが、それはなく、各部屋にジャグジーがつくという。ブラジルの浴室はシャワーのみのケースがほとんどなのだ。ただジャグジーはほぼ同様のものを確認したが、お湯に浸かり疲れを取る用途は十分に満たせそうだ。ルシアーノ氏によれば一部を除き5月20日に完成するというが、果たしてどうなるか。
サッカーグラウンドは、ブラジルのプロクラブが合宿に利用することもあるため、元々2面を完備している。そのうちメインで使用するほうには、夜間でもプレーできるよう、JFAの要請ですでに照明を設置していた。ただし現状ピッチのコンディションは、代表チームがトレーニングを行うレベルには程遠かった。芝ははげた箇所が目立ち、全体的にでこぼこしている印象だ。ルシアーノ氏は両面とも5月25日に完成予定と話すが、JFAの想定通りの状態にまでなるだろうか。
ルシアーノ氏によれば、JFAが同ホテルと契約したのは6月7日~7月3日まで。つまり大会日程でいうと、決勝トーナメント1回戦が終わる時期までだ。勝ち進み、引き続き同ホテルに留まるのであれば、再度延長する契約を結ぶ。
開幕ゲームが行われるサンパウロのイタケロン・スタジアムも未完成、同じくイトゥ―市を拠点とするロシアのキャンプ地も日本以上に完成にはほど遠い状態といわれている。まあ何とかなるというブラジルらしさと言えば聞こえはいいが、一事が万事。
インフラの整備不足やデモの危険性も合わせて、選手や観戦客を迎え入れる体制があまりにも整っていない。今回もキャンプ地レポートをするつもりが、肝心なレポート材料が未完成。まったく気がもめる。
【筆者紹介】
夏目祐介 YUSUKE NATSUME
1983年東京生まれ。早稲田大学、英国ローハンプトン大学院(スポーツ社会学)卒業。2009年ベネッセコーポレーション入社、2013年同退社。W杯のためすべてを捨ててブラジルへ。現在ブラジル邦字紙「サンパウロ新聞」記者。