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[2]セルジオ越後のブラジルWC予想「観客も要領のよさが試されるかもしれない?」

スポーツ 2014.03.04

セルジオ越後今年6月、セルジオ越後の母国ブラジルで、W杯が開催される。しかし本番を間近に控えた今、日本の報道では、社会が抱える問題に反発する大規模なデモへの不安や、試合会場のスタジアム建設の遅延など、ネガティブなニュースが目立つ。それについてブラジル人のセルジオはどう考えているのか。

まずセルジオは、「ブラジルは社会が変わったね」と語り、「昔ならW杯でデモなんて考えられないの。サッカーでなぐさめられる時代が終わったね」と嘆いた。
W杯のデモはSNSが参加者拡散のメディアになると言われているが、セルジオは「バスと地下鉄の賃上げに反対するデモで、集まる場所にみんなバスと地下鉄に乗ってくるのよ。何のためにやってるの? SNSで形のない仲間意識が生まれて、注目が集まる場所で暴れたいだけなのよ」と説明し、「ブラジルにそういう時代が来たね」と危惧した。

サッカーに話を移すと、開催国のブラジルは優勝候補筆頭の呼び声が高く、セルジオもそれに同意見だ。それにしても単純な疑問だが、なぜブラジルでは優秀な選手が多く育つのか。日本との違いは何なのか。
「違いは才能じゃないよ。サッカー人口との確率の問題よ。日本は学校でサッカー選手を育てるから、サッカー部に入らなかったらもうサッカーやれないのよ」。ではブラジルではどうなのか?「ブラジルでは学校は勉強するところね。サッカーは年齢に関係なく、いつでもどこでもやれるの。路上でできるし、どんなに小さな街にも受け皿となるクラブもたくさんあるの。だからポピュラー(な文化)になって、サッカー人口の裾野が広がるのよ」。
長年子どもたちを指導し、日本の草の根レベルのサッカーを熟知したセルジオならではの分析であろう。

最後に、今年のW杯の日本代表の展望を聞くと、「アジアには(予選突破が)確実な国って一つもないから簡単じゃないけど、一発勝負だから希望はある」と期待を込めた後、「でも3連敗したら日本のサッカーは危ないね。『海外ブランド組』の選手たちが揃う今のチームは世界でも勝てるって、実力以上のイメージで日本のマスコミが騒いだけど、うそだったじゃないかって。じゃあ次どうすれば勝てるんだって絶望感は怖いよ。そうならないことを願うよ」と締めくくった

 

【筆者紹介】
夏目祐介夏目祐介 YUSUKE NATSUME

1983年東京生まれ。早稲田大学、英国ローハンプトン大学院(スポーツ社会学)卒業。2009年ベネッセコーポレーション入社、2013年同退社。W杯のためすべてを捨ててブラジルへ。現在ブラジル邦字紙「サンパウロ新聞」記者。

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