テレビステーション

ロボ
Loading
ブラジル通信
サッカーに関わる人の情報をチェックしている人へ

ブラジル人元Jリーガーが一堂に―在ブラジル日本大使館にて

集合

 7月25日から8月2日にかけて行われた安倍晋三首相の中南米歴訪。最終訪問国ブラジルでは、1日に首都ブラジリアでジルマ・ルセフ大統領と会談し、共同声明を発表。2日はサンパウロにて、日系社会との友好親善に務めた。

 1日は共同声明の他に、日本大使館主催の様々な懇談会や意見交換会に出席。その一つに「サッカー感謝の集い」があった。
 このイベントは、日本でプレーしサッカーの発展に寄与したかつてのブラジル人選手たちを「功労者」として称える目的で開催。ジーコ氏やドゥンガ氏をはじめ、1998年W杯ブラジル代表で、横浜フリューゲルス(横浜Fマリノスの前身)などに所属したサンパイオ氏、78年、82年、86年のW杯ブラジル代表で、日本サッカーリーグ(JSL)の日産自動車でプレーしたオスカー氏や同じくJSL時代にプレーしたマリーニョ氏、またヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)や鹿島アントラーズでプレーしたビスマルク氏にアルシンド氏、サッカー解説者のセルジオ越後氏というメンバーが集結した。
 これだけ豪華な顔ぶれが一堂に会する機会はおそらく滅多になく、彼ら自身も再会を楽しんでいる様子だった。
 さらにドゥンガ氏がブラジル代表監督に就任したこともあり、当日は日本だけでなく、ブラジルの報道関係者からの注目も集めた。

ジーコとドゥンガ

<ジーコ氏(左)とドゥンガ氏>

 同会で首相は「ブラジルは日本のサッカーの師匠。高い技術のみならず、プロとしての心構えを日本人に教えてくれた」 と謝意を表すと、功労者を代表してジーコ氏は「日本では人をもてなす姿勢や仕事ぶりから多くを学んだ。これからも交流を深め、きずなを強くしていきたい」と答礼した。
 その後、首相からジーコ氏に記念品が贈られ、ドゥンガ氏には日本サッカー協会の大仁邦彌会長が日本代表のユニフォームを贈呈。逆にジーコ氏が首相に出席者全員のサイン入りボールを寄贈すると、両氏は別のボールを使ってパス交換を始め、無数のフラッシュがたかれていた。
 しかしそれ以上に会を盛り上げたのがアルシンド氏。最後の集合写真撮影で、かつて日本のテレビCMで有名になった決めゼリフ「トモダチナラアタリマエー」を叫び、会場は笑いに包まれた。

左からアルシンド、ビスマルク、サンパイオ

<左からアルシンド、ビスマルク、サンパイオの各氏>

 終了後、筆者は功労者3人にインタビューし、「なぜ日本がW杯で負けたと思うか」を尋ねた。
 まずは現ブラジル代表監督のドゥンガ氏。「いくつか問題があったね。コンフェデ杯の後にケガをした選手も何人かいた。それ以上に、見たところ90%の選手にメンタルの変革が必要だ。ただそれはブラジル代表にも言えることだよ」
 続けて半分冗談で聞いてみた。当日大仁会長から、ドゥンガ氏の名前入りの日本代表のユニフォームを渡されていたが、将来的に日本代表の監督就任に興味はあるのか。
 ドゥンガ氏は笑い、「そうだな。今は将来のことを考えずに、ブラジル代表監督に集中するよ」
 予想通りの答えだった。

 「日本は僕の第二の故郷」と話すサンパイオは、「日本の結果は悲しかったし、驚きもした。僕は日本サッカーのクオリティを信じているし、今はドイツを中心に国外でプレーする選手も多いよね。直前のオランダやベルギーとの親善試合でいいプレーをしていたから、日本は決勝トーナメントに進めると思っていたんだ」と前置きし、敗因については「精神的にW杯を意識しすぎていたかな。ブラジルには大きな日系社会があるし、彼らにいいところを見せようと意気込んだのかもしれないね」と、日本をかばうように語っていた。

 最後にアルシンド氏。「初戦で集中を欠いていたね。それがすべてだったと思う。日本は3試合ともプレーにリズムがなかったけれど、初戦に向けての調整ミスを最後までひきずったように見えた」
 また4年後に向けては育成の重要性を説く。「プロリーグができてまだ20年。日本サッカーは驚くべき発展をしているけれど、この先はまだ時間がかかるよ。日本は少年、学生など若いカテゴリーで基礎力をもっと高める必要がある。それは戦術理解やテクニック、シュートを枠に飛ばすことだよ」

 今回出席したブラジル人功労者たちに話を聞くと、月並みだが皆日本が大好きで、日本サッカーの動向も細かく追っている。日本代表の新監督が決まったが、現在代表やJリーグの強化において、彼らOBの存在感はほとんどない。
 しかし彼らは経験から日本サッカーの長所短所を語れ、本気で日本のために仕事ができる。過去の功績を称えることも大切だが、W杯の敗北を受け迷走する今だからこそ、今一度日本サッカーの原点に返り、実務的に彼らの力を借りるのも一案だと思う。

 

【筆者紹介】
夏目祐介
夏目祐介 YUSUKE NATSUME

1983年東京生まれ。早稲田大学、英国ローハンプトン大学院(スポーツ社会学)卒業。2009年ベネッセコーポレーション入社、2013年同退社。W杯のためすべてを捨ててブラジルへ。現在ブラジル邦字紙「サンパウロ新聞」記者。