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ブラジル通信
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[18]サンパウロ「日本祭り」に現れたnakata.net cafeと中田英寿氏

 サッカー元日本代表の中田英寿氏が中心となり、サンパウロ市に期間限定でオープンした「nakata.net cafe」(現在は終了)は、内装はカフェというより、スタイリッシュなバー。木目を生かしたカウンターには、和食の創作料理が美しく盛り付けられ、日本各地の日本酒が並ぶ。いかにも和風な空間を選ばないところにも中田氏のこだわりが見てとれる。
 nakata.net cafeはW杯期間中に開催されたサンパウロの「日本祭り」(フェスティバル・ド・ジャポン)にも日本酒ブースを出店した。

 日本祭り、郷土色ブースを回る 日本祭り、カフェブースにて

 簡単に日本祭りについて説明しよう。ブラジルの日系社会にはいくつかの主要団体が存在し、同祭りの主催はそのうちの一つ「ブラジル日本都道府県人会連合会」。その名の通り、同郷出身の一世やその子孫が集まり、文化的な活動やイベントを定期的に行っている。
 日本祭りの目玉は、各都道府県が特産物を販売する郷土食コーナー。他には協賛企業がプロモーション用にブースを出し、ステージでは歌謡に演劇、ミス・ニッケイやコスプレのコンテストなども行われる。今年は7月4日から3日間開催し、のべ18万人が集まった。
 その日本祭りに中田氏が来場したのは5日。同カフェのブースを確認し、しばらくすると郷土食コーナーに足を延ばした。
 まずコーナー入口すぐの場所に構えた出身地である山梨県のブースを覗き、メニューを確認するとゆっくりと歩き出し、他県の商品や行列のでき具合などを細かく観察して回った。
 同行した筆者に時折「各県食べ物以外は売ってはいけないのか?」「必ずしも特産物でないものも売っているけれど、その規制はないのか?」「各県以外にも出店しているがどんな団体なのか?」などと尋ねる。また近年経費の増大等で厳しさを増す同祭りの状況を説明すると熱心に耳を傾けた。
 選手時代も引退後も、外国での生活が長い同氏だが、このような日系の催しはこれまで参加したことがなかったという。

 中田氏、カフェにて

 ブラジルの邦字紙サンパウロ新聞にて、同カフェオープン前に中田氏にインタビューをした時、同氏が伝えたい日本らしさとは何かと質問した。
 中田氏は、「僕は『らしさ』という言葉が好きではありません。なぜならそれは発信側が定義することでなく、受け取る側が決めることだからです」と前置きし、「なので今回(同カフェで)も、僕がよいと信じた『日本』をブラジルに紹介していますが、正しいかどうかは分からない。足を運んでくれた人それぞれに判断してもらいたいです」と答えた。
 ところで中田氏はサッカー界への復帰を考えないのか。尋ねると、「今でもチャリティマッチなどで、サッカーと関わっていますよ。でも根本的にサッカーは自分にとってプレーして楽しいもの。サッカーで金儲けは考えていないです。監督やコーチも含めてね」と話していた。

 郷土食コーナーを一通り見終えると、最初に立ち寄った山梨県のブースに戻り、特産物の「ほうとう」を注文。口にすると「麺がうどんだから、ほうとうではないな」と苦笑いした。
 筆者は「nakata.net cafe」一連のプロモーションに一つの疑問があった。サンパウロ市では最終的に黒字になったのか。
 これに対し中田氏は、「利益を上げるためにはやっていないですよ。というよりはっきり言って赤字です」と少し笑うと、表情を改めてこう答えた。
 「この日本祭りは利益目的で開催していますか?やることで日本文化を知らせて、将来へのモチベーションを保つためにやっているのですよね。それと同じです」。

 

【筆者紹介】
夏目祐介
夏目祐介 YUSUKE NATSUME

1983年東京生まれ。早稲田大学、英国ローハンプトン大学院(スポーツ社会学)卒業。2009年ベネッセコーポレーション入社、2013年同退社。W杯のためすべてを捨ててブラジルへ。現在ブラジル邦字紙「サンパウロ新聞」記者。