テレビステーション

ロボ
Loading

ブラインドサッカー世界選手権リポート(2)

成功だったブラインドサッカー世界選手権日本開催

2-1
<6位になった日本代表にエールを送るサポーター>

■ 国内外から100件以上の取材申し込み

 11月16日から24日まで、東京・渋谷で開催された「ブラインドサッカー世界選手権」は成功裏に終わった。そう考えるのは、今大会では、1)多くのメディアで取り上げられ、2)イベント運営に様々な試みがあり、3)日本代表が健闘し好成績をおさめた、からだ。これらに、2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定が大きく影響していることは間違いない。

 今大会へのメディアの関心は高く、大会の取材申し込みは、国内外から100件を超え、9日間の大会期間中、のべ約570人の報道関係者(放送中継関係者を除く)が取材に訪れた。終盤を迎えたJリーグやサッカー日本代表戦と重なっていたにも関わらず、テレビ(地上波)や新聞(全国紙)で大きく取り上げられた。スポーツニュースや運動面だけでなく、ワイドショーや社会面でも扱われたことで、より広く知れ渡った。
 あるチーム関係者の話では、大会期間中、選手とチームスタッフが電車に乗っていたら、テレビで見たというご婦人から「これで、みなさんで何か食べて!」とお金を渡されそうになったそうだ。ワイドショー・社会面効果だろう。
 しかし、むしろ今大会のメディアの姿勢としては、障がい者スポーツにありがちな「障がいを乗り越えて」というような切り口よりも、ブラインドサッカーを「競技スポーツ」として、視覚障がいを持つ選手を「トップアスリート」として取り上げるケースが多かったのではないか。スポーツニュースや運動面できちんと試合結果が報道されていたことは大きな変化であり進歩だった。

■ 激戦の連続、日本代表は過去最高の第6位

 試合は想像以上に激しく華麗だった。選手同士のぶつかり合い、両サイドのフェンス際でのせめぎ合いやフェンスを利用したパスなどは、サッカーと言うよりもアイスホッケーを観ているようだった。
 優勝したブラジルは、そんな激しさとともに、サッカー王国らしいボールコントロール、パスワーク、身のこなし、そして強烈なシュートで観衆を魅了した。
 試合が進むうちに、障がい者がやっていることへの先入観、偏見はまったくなくなり、ひたすら固唾をのんで観入っている自分に気づいた。
 激戦が続くなか、日本代表も健闘した。これまでパラリンピックには出場できず、2回出場した世界選手権では引き分けはあるものの勝ったことがない日本代表は、それでも開催国としてベスト4進出を目標に掲げた。
 日本代表は、「堅守速攻」を徹底して、1勝2引き分けのAグループ2位で準々決勝(ベスト8)に進出し、最終成績は過去最高の6位だった。やはり、世界選手権という勝負の世界。日本代表がふがいない戦いぶりだったら、これほど盛り上がらなかっただろう。今大会の成功の最大の要因である。
 大会を通じての日本の失点は、フランス戦でのペナルティキックによる1点のみ。6試合で1失点は、優勝したブラジルよりも少なかった。目標だったベスト4には届かなかったが、世界と十分に渡り合えるレベルに届いたと言えるだろう。
 日本代表は、2016年リオデジャネイロ・パラリンピック出場権を獲るために、2015年秋以降に予定される五輪アジア地区予選に挑む。アジアからの出場枠は2。強豪の中国などがいて厳しい戦いになるが、2020年につなげるためにも、ぜひ勝ち抜いてほしい。

■ 観客のためのさまざまなサポート

 コートのなかの激しさとは対照的に、コート外には優しさがあふれていた。メディアと同じく、障がい者スポーツに関わる人たちの関心も高く、運営面でさまざまなサポートが試みられた。
 ボランティアは約400人が登録をし、期間中のべ700人以上が大会運営のサポートをした。なかには、東京都のオリンピック教育推進校でもある渋谷区立広尾中学校のように、授業の一環としてボランティア活動をしたケースもあった。
 会場内のサポートテントでは、視覚障がい者向けに、凸凹で図面をあらわし点字を施した触地図の会場案内図、イメージをつかむための会場の縮小模型、筆談や文字を拡大して見るためのタブレット端末などを用意。また、障がい者を席に案内するスタッフは、すべて「サービス介助士」の資格をもっているということだった。さらには、補助犬用のトイレまで。
 なかでもFM放送で全試合を実況中継した「音声ガイド」は好評だったようだ。最も入場者が多かった最終日には、用意していたFM受信機80台すべてを貸し出した。実況は、東京アナウンスセミナーの先生、生徒、そしてプロのアナウンサーらが分担した。
 音声ガイドのシステム協力をしたパラブラ株式会社の松田高加子さんは、「80台すべて使われたのは、目の見える方にも便利だったから。映画監督の周防正行さんが言う『観客を選ばない映画づくり』をスポーツ観戦にも持ち込みたい。2020年には、すべての競技会場で音声ガイドを実現したい」と夢をふくらませる。

 コート内の激しい戦いを観るうちに、ブラインドサッカーの観戦に、「障がい者への同情心」はまったく不要だとわかる。一方、コート外では、だれもが観戦を楽しめるように、様々なサポートが必要だ。いまさらながら、今回のブラインドサッカー世界選手権から気づかされたことである。

文・写真:尾崎和仁