日本映画、疾走

映画ジャーナリスト/斉藤守彦
シネマタグ〜週末はコレだ!
最新号

日本映画、疾走 最終回!
「……ご心配なく。着実に進んでおります(後編)」

シネマタグ〜週末はコレだ!最終回!
「沈まぬ太陽」

(バックナンバー)

斉藤守彦
(さいとうもりひこ)

1961年、静岡県浜松市出身。映画業界紙記者を経て、映画ジャーナリスト/アナリストに。「INVITATION」誌ほか、現在多数のメディアで執筆中。映画業界内の多種のデータを検証し、その卓抜とした切り口・語り口が多くのファンに支持されている。

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WEBスペシャル連載コラム日本映画、崩壊
映画ジャーナリスト/
斉藤守彦

「20世紀少年 最終章/ぼくらの旗」

vol.41 2009年9月2日

かつて特撮少年だった、
この国の、あらゆる人々に捧ぐ。

試写会で上映したのは、劇場公開版とは違うバージョンなんだって?

そうそう。ラスト10分が明かされていない、「特別編集版」で、上映時間もその分短い。

それでレビュー書いていーのか?

いーんだよ。最終章なんだから。

なんか前回も「いーんだよ!」って言ってたような気がする…。

まあとにかく「20世紀少年」3部作だけど、第1章はこのシネマタグでも扱ったように、すこぶる心地よい後味を残す作品だった。ところが第2章ときたら…。

好きじゃないの?

話があっちに行ったりこっちに行ったりで、交通整理が出来てない感じ。正直、見終わってどっと疲れた。

それなのに今回の「最終章」を取りあげるってのは、どうした心境の変化?

別に心境は変化してないさ。むしろ第1章を見た時の気持ちに戻ったって感じかな。

そもそも君は「20世紀少年」3部作を、どう評価しているの?

だから、第1章はよく出来た作品だと思うし、心情的にも同調出来る。でも第2章は、そういった隙間がなくなっちゃった。それが最終章では戻ってきている。これまた評価というよりは「同調」なんだけどね。「分かる分かる、その気持ち」っていう。

作品としてのクォリティを指しているわけではないのだな。

本来は、そこから心情論に行くべきなんだけど、まーいーじゃん。カタいこと言うなよ、この際(笑)。

確かに、よく出来た映画だけど、感情的に同調出来ない作品よりは、その逆のほうが良いなあ。

だろ。ここで第1章を扱った時も、僕は「原っぱに作った秘密基地で、わしらは本気で決意した。『もし宇宙人が責めて来たら、ボクらが地球を守るんだ!!』って。その精神、その心意気が甦ってきたよ」って発言をしたけれど、そこに戻ったね。着地してくれた。それが本当にうれしい。第2章を見た時は、いったいこの映画、どうなっちゃうんだろう?と思ったもの(笑)。

結局そういうことを描いた3部作だったのかなあ?

ケンヂ、オッチョ、ユキジ、カンナと「ともだち」の対決という図式にはなっているけれど、もともとはみんな同じ場所で同じ遊びをしていた仲間たちだったんだろ、と思うし。だから、最終章でも唐沢寿明や豊川悦司が必死になって闘うんだけど、どこかそれが「ごっこ」っぽいというか…。

「ごっこ」っぽい?

そう。リアリティを感じないんだよね。まるで小学生の時、原っぱでヒーローものごっこや怪獣映画ごっこをやったような、あの感覚。あれにすごく似ている。確かに起こっていることは、地球規模のカタストロフなんだけど。

本気でヒーローものごっこをやってるような?

そうそう。ヒーローものごっこというよりも、特撮ごっこだよ。今回ロボットとか円盤なんかも出てきて、ビジュアル的には目を見張るものがあるんだけれど、それがもろに東宝特撮テイスト!!

まあ配給は東宝だし(笑)。

必死になって、特撮ものごっこやってるヤツらを、近い世代のスタッフが、同じ気持ちになって撮りました!!って感じかな。

堤幸彦監督は、特撮映画が好きなの?

以前インタヴューした時、「『海底軍艦』をリメイクするのだったら、ぜひ私にやらせて欲しい!!」と力説してたから、やっぱり多少の思い入れはあると思うよ。

そうか。じゃあ共通項は東宝特撮映画なんだ?

唐沢寿明1963年、豊川悦司1962年、香川照之1965年、佐野史郎1955年、古田新太1965年生まれ。ご丁寧にプレスシートに、出演者の生年月日がすべて書いてあるんだけれど、こういった40代から50代の出演者が、少年時代に特撮映画を何らかの形で見ていないはずがない!!

佐野史郎は、そっち方面は筋金入りだしね。

プレスシートのコメントでも「東宝特撮映画で少年時代を過ごした僕にとって、この映画は特別」って、言いきってるよ(笑)、佐野さん。

1961年生まれで、特撮映画を見てきて、一時期特撮雑誌のライターまでやった君としては、確かに同調するよなあ(笑)。

原作の浦沢直樹も、ズバリその世代だから、その同調性ってのは、原作のテイストなんだろうね。それを映像化する上で、1955年生まれの堤監督が、それを大切にした。だから「原作原理主義」を貫いたんだと思う。

ふーん…なんか聞いてると、すっごくディープな世代感覚が込められた3部作なんだなあ。

…おそれいったか!?

うん。ちょっと関心したよ。でも、とんでもなく的はずれな指摘を、無茶苦茶力を込めてしているかもしれないよ(笑)。

それはすべての作品において、そうだよ(笑)。レビューってのは、そういうもんだし。

例えば「ゴジラ」とそっくりのシーンがあるとか、海底軍艦そっくりのメカが出てくるとか、特撮オマージュって、そういうこと?

とんでもない。そこらの特撮ヲタク監督なら、ここぞとばかりにやるかもしれないけど、堤監督は単に特撮映画にオマージュを捧げたかったのではなく、その特撮映画をかつて愛した人たちの、当時の気持ちというものにこそ、ある種の敬意を捧げているのだと思うよ。

聞いてると、もうこれは完全に、おっさん世代のための映画なんだなあ、って感じがすっごくする(笑)。

それだけじゃ、ないけどね。とりあえず、僕はそういう受け止め方をして、そういう楽しみ方をした。結果は満足。第1章ストライク、第2章ボール。でも最終章では、剛速球のストライクを投げてくれたさ、堤監督。第1章のエンドクレジットに、ケンヂたちが少年時代、原っぱでヒーローもののポーズとってる写真にかぶるじゃない?あれなんだよね。あの精神。「あ、あの写真の中に、当時のオレがいる!!」って思ったよ。

で、完全な「20世紀少年 最終章/ぼくらの旗」は、映画館に見に行くの?

あたぼうよ。新型インフルエンザ、何するものぞ。最終章の最後も、あの写真で終わってるといいなあ。

(斉藤守彦)

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