ごく普通の人々が、足のつかない(とその時は思った)大金を前にして理性を失い、破滅していく。その過程で、主人公兄弟の秘められた愛憎が明らかになる。
ビル・パクストン扮する弟は、平凡ながらもそれなりに満ち足りた生活を送っていた。しかし、大金があればワンランク上の生活を手に入れられる。そう考えてしまったら、現在の幸せなど取るに足りないものに思えたのだろう。かくして彼は、ブリジット・フォンダ扮する妻とともに道を踏み誤っていく。
一方、ビリー・ボブ・ソーントン扮する兄は、その金を切実に必要としている。何をやってもうまくいかず、人並みの幸せさえ縁遠いこの人物にとっては、亡き父が手放した農場を買い戻すことが、閉塞した現状から抜け出すための唯一の手段なのだ。彼がその思いを切々と訴えるシーンは、巧者ソーントンの熱演もあって涙を誘う。
この兄弟は、生々しい欲望や弱さを抱えたリアルな人間として描かれているが、彼らを見舞う運命は神話的な様相さえ呈している。その容赦のない過酷さに、身の引き締まる思いがする。
余談だが、本作に主演したパクストンの初監督作「フレイルティー/妄執」がひっそりと公開された。巷の話題にはなっていないようだが、これは意外な拾い物。




