ケネス・ブラナーが、映画監督デビュー作「ヘンリー五世」(1989年)に続いてシェイクスピアの戯曲を映画化した、とことんハッピーな恋愛喜劇。ブラナー自身と当時の愛妻エマ・トンプソンに加え、デンゼル・ワシントンやキアヌ・リーヴスといったハリウッドの人気スターをぜいたくにキャスティングし、さんさんと降り注ぐイタリアの陽光の下で恋の喜びをおおらかに謳い上げた。
緑豊かな田園風景が広がるメッシーナに、戦いに勝利したアラゴンの大公ド・ペドロ(ワシントン)の一行がやってくる。彼らは人々に歓待されて当地の領主レオナート(リチャード・ブライアース)の屋敷に滞在し、大公の部下であるクローディオ(ロバート・ショーン・レナード)はレオナートの娘ヒーロー(ケイト・ベッキンセイル)に恋をした。ドン・ペドロは若い2人の仲を取り持つ一方、独身主義者の部下ベネディック(ブラナー)とヒーローの従姉妹ベアトリス(トンプソン)がいがみ合いながらも実は互いに好き合っていると察し、彼らも結びつけようと奔走。ところが、大公と確執のある異母弟ドン・ジョン(リーヴス)は、そんな周囲の幸せなムードが気に入らず、クローディオとヒーローの仲を裂こうと暗躍する。
馬を駆る男たちと沐浴する女たちの姿をダイナミックな映像で交互に描いていくオープニングから、戯曲を映画化した場合にありがちな演劇くささとは無縁の映画的な躍動感にあふれている。演劇界出身のブラナーは大作「ハムレット」(1996年)を含め、たびたびシェイクスピア作品の映画化に取り組んでいるが、舞台用に書かれた原作を映画的に消化しきっているという点で、本作は最も成功した例だろう。




